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サステナブルとは理論や計算ではなく「もっとずっとヒューマンなもの」

パコマルカ研究所の所長を務めるアロンゾ・ブルゴスさん。標高4000mを超えるアンデスの放牧地帯で、約1800頭のアルパカを飼育。先住民とその文化に寄り添って生きてきた人物だ。

パコマルカ研究所の所長を務めるアロンゾ・ブルゴスさん。標高4000mを超えるアンデスの放牧地帯で、約1800頭のアルパカを飼育。先住民とその文化に寄り添って生きてきた人物だ。


最大のターニングポイントは’12年に訪れる。アロンゾ・ブルゴスさんとの出会いだ。チチカカ湖西岸の街、プーノの南に広がる放牧地帯にパコマルカ研究所を設立。

長年にわたりアルパカ繊維の品質向上について研究を重ねてきた人物だ。ふたりは敬意を込めてアロンゾ先生と呼ぶ。

「アンデスのアルパカビジネスの最重要人物です。僕たちがやりたいと思っていたことを、アロンゾ先生は30年以上前から続けていました」(聡さん)。

研究所ではアルパカの繁殖や飼育のみならず、周辺農家に遺伝的に優れたアルパカを供給し、毛刈り技術や繊維分別の指導なども積極的に行っていた。先住民たちの誇りであるアルパカの毛を最高品質に仕上げることで、先住民たちの生きるモチベーションと、生活の向上を目指していたのである。

感銘を受けたふたりは同年、パコマルカ研究所とのパートナーシップを締結。彼らが追求する“世界一のアルパカニットのコレクション”の輪郭が、ようやく見え始めた瞬間でもあった。

「この(’22年)5月にも研究所に行きました。アンデス最大のアルパカ農家組合との、新たなビジネスが始まるんです。その規模は今までの25倍。14年間にわたるプロジェクトです」(清史さん)。

契約は書面ではなく先住民の儀式に参加することで交わされるという。それは文字どおりの儀式で、パチャマンマ(大地の母)と呼ばれるものだ。

「彼らとともに大地に祈り、酒を飲み、飯を食い、踊る。お金やモノを渡すだけでは、彼らと信頼関係を築くことはできないのです」(聡さん)。

18年続けてきたザ イノウエブラザーズのサステナブルな活動は、こんなふうにいつでも相手に対する尊敬の念に溢れ、世の中を変えてやろうという熱い思いに満ちている。

程良い厚みと正確なステッチ。オーガニックなピマコットンを使用した、一枚で着て様になるポケットTシャツ。1万1000円/ザ イノウエブラザーズ(ザイノウエブラザーズジャパン 06-4307-4775︎)

程良い厚みと正確なステッチ。オーガニックなピマコットンを使用した、一枚で着て様になるポケットTシャツ。1万1000円/ザ イノウエブラザーズ(ザ イノウエブラザーズジャパン 06-4307-4775︎)


最後に、ふたりはこんなメッセージを残してくれた。彼らは確かにファッションデザイナーである。でもそれ以上に、筋の通ったアクティビストなのであった。

「もし僕らの服を買ってくれたなら、僕らは心の底から感謝します。そして、絶対に後悔させないものを作っている自信もあります。

でもサステナブルについて語るのなら、誤解を恐れずにこう言いたい。ザ イノウエブラザーズの服なんて買わなくてもいいと。

サステナブルというのは結局、(CO2削減量などの)計算ではなく、もっとずっとヒューマンなもの。人に感謝して、モノに感謝することがいちばん大事なんです。そういう気持ちがあれば、今ある服をもっと大切に、長く着るようになるはず。

サステナブルとはそんなマインドシフトで、今すぐにできることなんです」。

THE INOUE BROTHERS… ザ イノウエブラザーズ
創業年:2004年
本社所在地:大阪府大阪市東成区
事業展開:世界4カ国、71店舗
https://theinouebrothers.net

Sustainable Keywords
・アンデス先住民および現地工場とのダイレクトトレード
・アルパカ産業を機軸とした文化の継承と地域経済の活性化
・ソーシャルデザイン(※1)に基づき東北やパレスチナでも事業を展開
(※1)創造力で社会課題を解決していこうというムーブメント。1990年代後半から、アメリカやヨーロッパで注目され始めた。


川西章紀=写真 加瀬友重=編集・文

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