ブランド存続の危機が絶好のタイミングに
「漫画から学べることってたくさんあるし、前々から旅行ガイドブックと漫画は相性がいいと思っていて。いつか丸ごと1冊使って漫画コラボできたらとは漠然と考えていました。
ただ、『地球の歩き方』は1〜2年ごとに改訂作業があり、その延長線上で新刊などの制作にも追われていたため、なかなか実現するエネルギーも必然性も旧社時代はありませんでした」。
由良氏が立ち上げた、『aruco』シリーズ。女性目線で載せるというコンセプトがウケて、人気シリーズに(撮影:今井康一)
しかし、コロナ禍で海外取材ができなくなると主力商品である『地球の歩き方』の制作がストップ。ブランドの存続自体が危ぶまれる窮地に陥り、編集部では他社とのコラボ企画を検討することになった。
2022年2月に発売されて注目された『地球の歩き方ムー』と、『地球の歩き方 JOJO』はほぼ同時期に企画されたようだ。
「海外取材が必要ない国内版などの制作物もありましたが、2021年1月にGakkenにグループインした直後は、何かしら新しい取り組みをしないと、ブランドの存続自体が危うい状況でした。新生した『地球の歩き方』の新井邦弘社長が「ムー」編集部出身ということで、「ムー」との企画がすでに動き始めてもいたので、漫画コラボを実現するなら、まさにいまかなと」。
©荒木飛呂彦 & LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
さまざまな漫画の中でも『ジョジョの奇妙な冒険』は、エジプトやイタリアなど旅行好きが一度は行きたい憧れの国・エリアを舞台に、実在するスポットが作中に多く登場するため、社内ではスムーズに企画が通ったと語る。
「作中で各地の文化や歴史にも触れられていることもありますし、編集部にも『ジョジョ』好きのメンバーが多く、2021年3月には集英社さんに企画を持ち込みました。2022年に35周年を迎える記念コラボとしてご提案できたので、いろいろなタイミングもよかったですね」。
©荒木飛呂彦 & LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
『地球の歩き方 JOJO』では『ジョジョ』作品に造詣の深いライターが原稿を担当しており、由良氏が旅行ガイドブックとして実用的な旅情報を加味するという制作体制をとった。
「今回は生原稿の段階から推敲を重ねました。長年『地球の歩き方』を制作している外部スタッフからの最新情報も盛り込んでいます。通常の『地球の歩き方』の制作は、ライターさんの原稿をレイアウトに落とし込んだ後、私が確認するという流れなので、通常よりも労力はだいぶかかっていますね。
また、コアなファンに楽しんでもらうことがコンセプトなので、レイアウトは『地球の歩き方』のフォーマットを崩さずに、色使いなどのデザイン面は『ジョジョ』を感じてもらえるような工夫もしました」。
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