さて、彩佳さんはPRスタッフとのことですが、広報的な業務なんでしょうか。
「いえ、『ふうりん堂』という屋号で、お菓子やスイーツの移動販売をしています。向かうエリアは埼玉県全域で、折りたたみ式のリアカーを自分の車に乗せて現地に向かうんです」。
販売スタイルは下の写真。
これを引いて埼玉県内の各所を練り歩くわけですね。
せっかくなので、本日の商品を見せていただけますか。
いずれも、厳選して各地から取り寄せている。
ここで、近くに職場がある女性が「何を売っているんですか?」と言いながら近付いてきた。
彩佳さんの商品説明を熱心に聞く女性。
その結果……。
ご購入いただきました。
たしかに、「カマンベール王子様」は美味しそうだ。オフィスに戻って、じっくりと説明してもらった。
「今日は6種類のケーキを持ってきているんですが、一番人気はこれです。北海道産の原料にこだわって作っているカマンベールのチーズケーキで、上にチーズが乗っかっています。プレゼント用とか自宅でおやつに食べるという男性ファンも多いです」。
お値段、1300円。いただきましょう。常温でも20日間ほど日持ちするそうだ。
スーパーやコンビニではなかなか手を出さない値段だが、これも移動販売マジック。
好きなお菓子を聞かれたので「最近はチョコナッツをよく食べています」と答えると、オススメ商品を試食させてくれた。
「ナッツの周りをチョコでコーティングしているんですが、味はもちろん、しっとりとした食感も癖になります」。
京都の「GARAGE COFFEE」というカフェから仕入れているということだが、これがほのかな塩味も効いていて本気で美味しかった。
和三盆、キャラメル、ココアの3種セットで2400円。
路上のほかに、企業のオフィスや個人宅にも訪問する。すべて飛び込みだ。説明を聞く人は半分ぐらい、買ってくれるのは1割ぐらいだという。しかし、彩佳さんは多い日で7、8万円を売り上げる。
「台風でも土砂降りでも行くので、『頑張ってるから買ってあげるよ』と言っていただく方もいますね。悩みを抱えているという若い女性に『スイーツを買って癒されました』と言われたこともあります」。
1日に歩く距離は平均2万歩。駅前で止まって売ってもよさそうだが、あえて幅広い客層にアプローチできる移動販売にこだわる。
「いろんな人に会いたいから、リアカーを引きながら常に走っています。移動時間を短くすれば、その分売り上げも上がるので」。
そんな彩佳さんを推薦してくれたのは代表の川上理恵さん。
「彩佳ちゃんは、とにかく明るくて前向き。最近の子は行動する前に考えちゃうケースが多いけど、彼女はまずやってみるというタイプです。移動販売のスタッフは8人いますが、売り上げはダントツトップ。意外とノリで売っているんじゃなくて、本気で勧めるトークやお客さんへの気配りがその理由でしょうね」。
社長に絶賛されて照れる看板娘。
なお、リアカーは1人1台が与えられる。
それぞれ装飾などに工夫を凝らし、マイリアカーに仕立てているのだ。
「お客さんから毎日元気をもらっています」という彩佳さんが、販売中のほっこりエピソードを教えてくれた。
「老夫婦が住んでいる家に招き入れられて、お菓子やジュースをいただくことも時々あります。自分で決めた売り上げ目標を達成していたら、ありがたくお邪魔するんです。足が不自由だからと言って、窓からおにぎりと漬物を差し入れてくれたおばあちゃんもいました」。
寒い時季にいただくコーヒーは、心も体もほっこりする。
旅行も好きな彩佳さん。中でもお気に入りスポットは伊豆スカイラインから見える風景だそうだ。
海、静岡の街並み、富士山が一望できる絶景ポイント。
会社のメンバーとも旅行に出かける。
昨年9月には「日本一の山に登ろうツアー」と称して、富士登山に挑戦した。最初は霧がかっていたが、7合目あたりから晴れて最高の景色を堪能したという。
山頂で撮った記念写真。
「同じく会社のみんなと新潟の十日町に行って、温泉宿でミーティングをしました。雪景色の中の露天風呂が最高で、宿のご飯も美味しかったです」。
名物の雲海は見られなかったが、大満足のメンバーたち。
彩佳さんの目標は2026年までに自身の古着屋をオープンさせること。
「店名も『カーボッコン』と決まっているんです。名字が車谷なので、車のカー、谷の英語がわからなかったのでボッコンでいいかなと。高校生のときに付けました」。
オフィス内のホワイトボードに書かれた決意。
彩佳さんなら実現できそうだ。
古着屋の店内でお菓子を販売するのもいいですね。今日はありがとうございました。最後に読者へのメッセージをお願いします。
出没スポットは告知しないので、「会えたらラッキー」な移動販売なのです。
[取材協力]Rinkhttps://rink-inc.jp