メリノウールとは何か?
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メリノウールとは、ウールのなかのメリノ種という羊の毛のこと。現在では主にオーストラリアやニュージーランド、フランスなどで多く生産されている。
天然の機能素材として人気のメリノウール。ファッションアイテムとしてはもちろん、機能性ウェアなどでも多く使用され、アウトドア愛好家からも絶大な支持を受けている。
その理由は、肌触りが良くて着心地抜群、保温力も高く、通気性もいい、などメリノウールが持つさまざまなメリットにある。
あらためて、メリノウールが他のウールや素材と何が違うのか、そのメリットやデメリットを確認しながら、メリノウールを使用したおすすめの商品なども紹介したい。
普通のウールとの違い
普通のウールとの違い。
メリノウールが採れるメリノ種の羊は、オーストラリアやニュージーランドなどで主に飼育される品種。世界中で3000種いると言われる羊の中でも、特に優れた毛質として知られている。
その起源は12世紀のスペインまで遡り、当時は輸出が禁止されていたというほど貴重な素材だった。解禁されたのは18世紀のことで、以降は世界中に広まっていった。
通常のウールは、ゴワついたり肌に触れるとチクチクする場合もあるが、メリノウールは繊維が細かく肌触りがいい。
またウールに比べてメリノ種は繊維が細いため、繊維同士が絡み合って空気を多く溜め込めるので、体温の熱を逃さず高い保温効果がある。
一般的なウールも保温性に優れているため秋・冬向けに使用されることが多いが、保温性に加えて通気性の高いメリノウールは年間を通して使用できる。熱伝導率が低いため、夏は涼しく冬は暖かいことが特徴だ。
メリノウールの種類
メリノウールの種類。
メリノウールの素材は産地と品質でいくつかの種類に分けられることがあり、現在は「オーストラリア」「ニュージーランド」「フランス」が主な産地だ。
特にオーストラリアは、メリノウール全体の中でも、生産量が最も多く、全体の40%ほどを占めていると言われる。
生産地によって「オーストラリア・メリノ」や「ニュージーランド・メリノ」「フランス・メリノ」などと呼び分けされ、産地が変わることで、微妙に風合いや特徴が変わると言われる。
またメリノウールは、繊維の細さによってランク分けがされている。
ウールの研究や認証を行う「ザ・ウールマーク・カンパニー」の区分けでは、最も細い「ウルトラファイン」が、繊維の直径が14.6~16.5μmで、「メリノウール」の中でも特に高級とされ滑らかな肌触りが特徴。
「スーパーファイン」は直径16.6~18.5μm、「ファインメリノ」は直径18.6~20.5μm、「メディアム」は直径20.6~22.5μm、「ストロング」は直径22.6~24.5μmと、繊維の細さでランクが分けられる。
メリノウールのメリット
ウールの中でも最も高品質な素材と言われるメリノウール。そのメリットとして5つの特徴がある。
着心地が良い
ウール製品は、チクチクして痒くなりそう……、そんなイメージがあるかもしれないが、メリノウールは繊維がとても細かいので、チクチクした不快感はほとんど感じられない。
さらに伸縮性が高いため、リラックスした着心地が味わえる。
吸水性が高い
ウールは繊維の中で特に親水性の高い素材で、自身の体積の30%以上の水分を保持することができる。
表面の水分を本体へ素早く吸収し、ウィッキングと呼ばれる作用により、水分は繊維に沿って外へ引き出され、水蒸気に変わり蒸発していく。
そのため、ベースレイヤーなどにも使用されている。
高い保温性で暖かい
高い保温性で暖かい。
羊毛の繊維は大気中の湿気を吸収して熱を発生させる。さらに繊維の表面にあるスケールという鱗状の組織が、熱を逃さない働きをする。
なかでもメリノウールの繊維は他のウールに比べ縮れが細かく、絡み合いやすいため、中に空気をたくさん含み、その空気が人の体温や湿気で温まり、その温かさがさらに人の体を温めてくれるというサイクルを生み出す。
この効果もあり汗冷えなども起こりにくいのだ。
防臭効果が高く、においが気にならない
メリノウールは天然素材で細菌など活動を抑える免疫機能を持っているため、それ自体が防臭力を持っている。
さらに繊維がキューティクルの膜で覆われているため汚れがつきにくく、臭いの原因となる細菌の付着や繁殖もしにくいため、防臭性に優れている。
家庭で洗えるウォッシャブル素材
メリノウールはデリケートな素材で洗濯が難しいだろう……、なんて思い込んでしまっている人もいるかもしれないが、実はカシミアなど他の上質素材と比べもメンテナンスが楽チンなのだ。
そもそも汚れにくい繊維のため、頻繁に洗濯しなくてもきれいな状態が長く続く。
洗濯をする際はウール用洗剤を使用し、「おしゃれ着洗い」のコースで選択するだけ。あとは形を整えて平干しすればOKだ。
メリノウールのデメリット
メリノウールはデリケートな素材なため、デメリットもある。
取り扱いがデリケート
素材が絡みやすいため毛玉ができやすく、乾きづらいということもある。さらに天然素材のため虫食いの危険性もある。きちんと特性を理解して対応することが大切だ。
価格が比較的高い
メリノウールの中にもランクによって価格はさまざまだが、基本的に高級素材のため製品価格は高い傾向がある。
なかなか気軽に購入できるものではなかったが、近年ではユニクロをはじめ、ファストファッションブランドでもメリノウールアイテムを扱うようになり、リーズナブルな価格でも手に入るようになってきた。
メリノウール製品が役立つ場面、用途
メリノウール製品が役立つ場面、用途。
セーターやカーディガンなど秋冬のファッションアイテムの素材として人気のメリノウール。
さらにその高い機能面からアウトドア分野でも重宝されている。保温性や調湿性、防臭性が高く、快適に過ごすことができるので、登山やトレッキング、キャンプなどのアウトドアシーンでのベースレイヤーとしても役立つ。
また、品質の高さと安定性を持つため、高級スーツやジャケットなどの用途にも使われている。
おすすめのメリノウール製品(トップス)
過酷なフィールドで活躍してくれる本格アウトドアタイプから、デイリー使いに重宝するファッションアイテムまで、これまでオーシャンズで紹介したおすすめのメリノウールアイテム例をご紹介。
クライマーズクライマックスのTシャツ
クライマーズクライマックスのTシャツ。
俳優・モデルとして多方面で活躍し、さらにキャンパーとしての顔も持つ水上剣星さん。
自身のキャンパーとしての実体験をもとに、「街からフィールドをシームレスに行き来するうえで本当に必要な機能は何か」を吟味し、企画・ディレクションに携わったブランドがクライマーズ クライマックスだ。
特にアウトドアでの機能性を備えた素材にこだわり、アイテムを生み出している。ベースレイヤーシャツにはメリノウール由来の「マウントブレスウール」という機能素材を採用。吸水速乾性や抗菌防臭性に優れ、アウトドアシーンで活躍してくれる。
バンブーシュートのカットソー
バンブーシュートのカットソー。
「機能美」と「時代の感性」にこだわり発信するセレクトショップ、バンブーシュート。
オリジナルのロングスリーブポケットティシャツは、ニュージーランド産のウォッシャブルメリノウールを使用している。
優れた調温・調湿機能を持っているので、都市生活からアウトドアまで1年中愛用できるアイテムだ。
ユニクロのカーディガン
ユニクロのカーディガン。
価格が高いイメージのあるメリノウールアイテムだが、ユニクロがその壁を突破。
メリノウールの中でも最高級とされるエクストラファインメリノウールを使用したニットアイテムをここ数年リリースし、大人気を博している。
クルーネックやVネック、タートル、さらにはカーディガンなどデザインやカラーも豊富に揃っているので、複数買いもオススメだ。
おすすめのメリノウール製品(ボトムス)
アクティブ系のスポーツ好きのなかで絶大な支持を受けているのが、メリノウールを使用したパンツ。こちらも過去の紹介アイテムからおすすめの3例を紹介する。
クライマーズ クライマックスのパンツ
クライマーズ クライマックスのパンツ。
ニュージーランド産の極細メリノウール糸を用い、登山用に開発した裏毛素材「マウントブレスウール」を採用。さらりとした肌触りで速乾性や防臭効果も発揮している。
裾にはシャーリング&コードを配置し、洗練されたシルエットに。このコードがパッキング時にも役立ってくれる。
アクリマのパンツ
アクリマのパンツ。
1939年にノルウェーで創業したメリノウール繊維のウェアブランド、アクリマ。
80年以上、過酷な自然環境で生活を支えるウールウェアを研究・開発し、蓄積されたノウハウでウールの機能を最大限に引き出している。
裏起毛させた素材感が特徴のメリノウールパンツは、柔らかな肌触りで病みつきになる。
アイスブレーカーのパンツ
アイスブレーカーのパンツ。
アイスブレーカーは、山男たちがファーストレイヤーとして高く評価する、ウール大国ニュージーランドのウールウェアブランド。
「どのように機能するか」を重視したシンプルなデザインにこだわり、高い支持を受けている。
このメリノウールパンツは、ナイロン糸にメリノウールを巻きつけたコアスパン糸を用い、細身に仕上げている。
まとめ
メリノウールについて、その種類やメリットを解説しながら、おすすめの用途や商品などをご紹介した。
さらにYouTubeでメリノウールについて解説した動画もチェックしてほしい