「モヤモヤ り〜だぁ〜ず」とは…… 本日の相談者:メーカー営業・45歳「部長に昇進して半年。かつて自分が課長だった課に新しい課長がやってきたが、どうも部下とそりが合わないようです。新課長からは『この課のメンバーは甘えている。上司は嫌われるくらいでいい。私は厳しく指導します』と言われました。
一方、元部下たちの話を聞くと『新課長は一方的で話を聞いてくれない』『口を開けば業績のことばかり』『一部のメンバーだけを贔屓している』などの苦情が出るわ出るわ。私は部長として、どういう立場でまとめていけば良いのでしょうか」。
アドバイスしてくれるのは…… そわっち(曽和利光さん)1971年生まれ。人材研究所代表取締役社長。リクルート、ライフネット生命保険、オープンハウスにて人事・採用部門の責任者を務めてきた、その道のプロフェッショナル。著書に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか?』(共著・星海社新書)ほか。
とりあえずは新課長を支持しましょう
まずとても気になるのは、新しい課長に対して部長のあなたが支持していない感じがすることです。
邪推かもしれないのですが、文面からだけだとどうも部下たちの苦情に寄り添ってしまい、「そうなんだ、新しい課長はそんな問題があるんだ……」などと答えたりしていませんでしょうか。それは絶対にダメです。
どんな状況であったとしても、第一対応としては新しい課長の肩を持つくらいでなければいけません。元課長で、さまざまな経験を通じて、部下の信頼を既に得ているあなたが新課長の味方にならなければ、彼は「はしごを外された」状態になってしまい、逆境の中でマネジメントを始めることになってしまいます。
「やはり自分がいないとダメ」という甘い思い
元課長であるあなたにとっては、元部下が頼ってきてくれて新課長の苦情を言ってくれば、なんとなくうれしい気分になるのでしょう。
「やっぱり俺でないとダメだよな」「彼ではまだまだ力不足だよね」などという気持ちが無意識的に湧き上がってきてはいませんか。
人は「やはり自分がいなければダメ」と自分は重要であると感じたい生き物です。
そこで上述のような対応を元部下にしてしまうことがありますが、本当の本当は「自分が上司でなくなっても回る組織を作る」ことこそがマネジメントのひとつの目標ですから、新しい課長が自分とは違うマネジメントスタイルであるなら、元部下にはそれに適応できるようなサポートをすべきではないでしょうか。
部下の苦情を受け入れては増長するだけ
もちろん、新課長がすべて正しいマネジメントをしているかどうかはわかりません。後々に修正しなければならないことも多々あることでしょう。しかし、それでも最初は支持しなければならないと思います。
例えば部下たちが苦情を言ってきたとすれば、「そうなんだね。でも、新しい課長はとても優秀で信頼できる人だから、何か意図があってやっているに違いないよ。早々に批判するのではなく、もっといろいろ話し合ってみてはどうかな」というように、部下たちを“いなす”くらいでちょうどよいのです。
それを部下の苦情を間に受けて「そうなんだ、それはまずいね。困ったね。大変だね」などと同調していては、本当は新しい上司にある程度歩み寄るべきなのに、部下は「やはり新課長はダメだ」と増長してしまいます。
マネジメントラインを飛ばした苦情は突き放す
信頼を得ていたあなたに対して元部下からの相談が来ることを止めることはできないと思うのですが、もしそういう相談が来たときに取るべき態度は「突き放す」ことです。
先に述べたように「新課長には新課長なりの意図がある」というスタンスで、「それを決めつけて、自分に苦情を言ってくるんじゃない」(言葉はもっと優しくていいのですが)と、受け止めるのではなく突き放すべきです。
実際、組織論の常道としても、部長-課長-部下というマネジメントラインを飛ばしてコミュニケーションをするのは(緊急事態・重大事態を除き)御法度です。部長にそんなことをされては、課長はたまったものではありません。
表では支持、裏では激論を交わすべき
そして、あなたがすべきことは新課長ともっと対峙することです。「私はもっと厳しく指導する」という方針に反対なのであれば、部下には表面的には一旦の課長支持の姿勢を示していても、新課長とはその方針に対してきちんと議論を交わすべきでしょう。
その上で、厳しいほうがよいとか、優しくすべきとか両者が納得できればよいですし、もしも新課長と意見が合わなければ、部長としての責任と権限から「嫌でもこのようにしてください」と命令すればよいのではないでしょうか。
それでももし新課長がその命令に従わなければ、しかるべき評価や措置を取ればよいだけです。組織とはそういうものです。
新課長に任せて支援するという手もある
もちろん第三の道として、「自分の意見とは違うが、君がそこまで言うのであれば、君の責任でそのマネジメント方針を貫いてみてくれ。最終的な結果については責任を負うように」と、新課長に一任するという判断もありえます。
ただ新課長には「責任を負え」と言っても、もちろんこの判断をした部長のあなたが本当の最終的な責任者であることは忘れないでください。
「あいつがそうしたいと言ったから」などという子供のような言い訳は通用しません。そして、表面的にはあくまでも「支持」の姿勢を示して、新課長の方針が本当に通用するのか、やりきって確かめていくことが重要です。
そこまでやれば、もしかすると新課長の方針が、本当は正しいことが判明するかもしれませんよ。