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2023.01.13

ライフ

“海のごみ”を使う現代美術家・藤元明が「人の来ないビーチ」で気づいたこと


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海のごみを素材に作品を創作した現代美術家の藤元明さん。

創作活動を通しての気付きを伺うと「人が集うビーチはとてもキレイ」との答えが。その真意を探る。

焼却処分をしても海ごみは次々にやって来る

遠目では美しい絵画のようにも見えるが、近くで見ると素材の生々しさもあって醜さを覚える。

見る角度によって印象が異なるこの色鮮やかなオブジェクトは、現代美術家の藤元明さんが手掛けたもので、2022年9月に東京・浅草にある「WATOWA GALLERY / THE BOX TOKYO」で催された個展「海のバベル/Babel of the Sea」に展示された作品。素材は海ごみで、容器やペットボトル、漁網などが使われている。

創作は、それら漂着物が堆積する海岸で、自ら持ち込んだ大きな鉄板の上へ置いていくことで進められていった。そして鉄板の下から火で熱し、潰し、するとプラスチックの素材は溶け合って、このようなオブジェクトになっていったという。

創作した作品は「Last Hope」シリーズ。拾われ使われた素材のどれもが唯一無二であり、作品はすべて世界でただひとつとなった。

そんな藤元さんは20代に友人たちとサーフィンに興じるなど、海を身近に感じて過ごした時期もあった。しかし作家として海をテーマに作品を手掛けたのは今回が初めてとなる。

プロジェクトを考え始めたのは’19年頃のこと。きっかけは「海ごみとは、いったい何か」という疑問を持ったことにあった。

以前から海ごみが多くのビーチに漂着している様子や、マイクロプラスチックが生態系に良くない影響を及ぼしているといったことは報道などを通して見聞きしていた。しかし日常的に実態を知る機会はない。それならば本物を見にいこう。そう思ったのだという。

「海がごみで大変なことになっている。長らくそう耳にしてきて、その状況を自分の目で見てみたいと思ったけれど、どこへ行けばいいのかわかりませんでした。

そこで海洋に関する研究と開発を行っている「海洋研究開発機構」の研究者(当時)と知り合い、海ごみの権威である九州大学の教授を紹介してもらったんです。すると教授は『今は五島列島の海ごみ研究を進めているのですが、山のように溜まっているところがあります』と教えてくれました。

そこでリサーチ目的で現地へ。場所は長崎県の奈留島にある、アクセスできる道すらない海岸。情報がなければ到底たどりつけない場所でした」。

船から飛び込み上陸した海岸には、色とりどり、大小さまざまな海ごみが漂着していた。

「これは、ひどい……」。思わずそう唸ったが、同時に「どうすれば作品に昇華できるのか」という問いが頭に浮かんだ。ヒントをくれたのは自治体の担当者だった。

「市役所に海ごみの処理方法についてうかがったんです。そうすると海ごみは潮で汚れ混入物もあるため基本的にリサイクルは難しく、市や有志で回収して焼却処分をしているのだと。

それに島で焼却できないものは、わざわざ船で長崎本土へ運んで燃やすと言うんです。相当なお金がかかるし、言うまでもなくそれらは税金。さらに、燃やしても燃やしても海ごみは次から次へ漂着してくる。

税金を使った無限のイタチごっこはある種の絶望であり、それでいて明確な悪者はいない。誰のせいでもないという状況に社会への疑問を感じましたし、この現実を可視化できればアートになりうると考えました」。

アートは誰も知らない社会の暗部に光を当てられる。しかも海ごみは世界に通じるテーマ。作品にも、世界中の人からの共感を喚起できるのではないか。そのような可能性も、藤元さんは感じたという。


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