▶︎すべての画像を見る 神奈川県逗子市をベースとする地縁コミュニティ「そっか」では、海で子供も大人も本気で遊んでいる。
代表理事の永井巧さんに活動目的について伺うと「海での原風景を心に刻んでほしい」との答えが。その真意を探る。
人と海との分断が起きている
日が傾き出した夕方の16時過ぎ。神奈川県の逗子海岸には地元の小学生が集っていた。
「これから黒門(くろもん)とびうおクラブを始めます!」。
ひとりの少年が声を出すと子供たちは三々五々に散らばった。その中心で「準備運動するよ!」と大人の声が上がると、子供たちは2人1組になって身体をほぐし、そののちに3つのグループに分かれていった。
それは海の中で遊ぶグループ、山に向かうグループ、サッカーなどをして浜で遊ぶグループ。何をして遊ぶのかは子供たち次第で、各グループには先導役の大人がついた。
海遊びのグループにはSUPやサーフスキーと呼ばれる波に乗れるカヌーが用意された。今日は海で遊ぼう。そう決めた子供たちは勝手知ったる感じで「SUPやりたい!」などど言って沖を目指した。
驚いたのは、誰もが海の中に入ることを怖がっていないことだ。
最近では大人でも「海は好きだけれど海の中は怖い」と感じる人が少なくない。波打ち際までは行けるがその先は別世界で、深さがわからない、潮の流れが読めない、何かがいるかもしれないと、わからないことばかりの海は怖い世界なのだ。
「人と海は分断されてきましたよね」。そう言ったのは先頭に立って子供たちと海遊びをしていた永井巧さん。
彼は一般社団法人「そっか」の代表理事で、活動の一環として「黒門とびうおクラブ」を平日の夕方に開催。SUP、サーフィン、カヌー、トレイルランニング、クライミングなどのアクティビティを用意して、子供たちに自然の中でとことん身体を動かしてもらっている。
「人と海との分断はもっと進むと思います。現在40歳前後の人なら幼少期に海で楽しく過ごした原風景を持っていると思いますが、全国的に臨海学校が減るなど海で遊んだ経験を持つ子供は少なくなっているのです。
理由は多岐にわたり、学校内の体制の変化、海で教えられる先生の減少、行政予算の割り当て先の変更で海辺に施設を所有できなくなったなど。世の流れとして海から人が遠ざかっている実情があるんです」。
先頃、海の専門家として都内の小学校に招かれSDGsの授業に参加した際にも衝撃を受けたという。
「担当した20人ほどの生徒は、事前に素晴らしいプレゼンシートを用意しているような優秀な子たち。でも内容はネット上で見つけた情報をコピーしたものが多く、“海の豊かさを守るために何ができる?”と問うと、“エコマリン認証の魚を買う”と口にする感じでした」。
都会の暮らしでも海が好きなら接点は持てる。海の豊かさについて、血の通う視点を持つ生徒と出会えなかったことは、彼ら彼女らの日々の生活に“海がない”からだ。そう永井さんは実感したという。
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