その都会的な見た目とはうらはらに、マイナス20℃までの寒さに対応してくれるタフなジャケット。中綿には「リサイクルプラムテック®︎」を採用する。6万9300円/セーブ・ザ・ダック 03-6822-7062
▶︎すべての写真を見る 左袖にあしらわれた、口笛を吹くアヒルのロゴが目印。動物由来の素材を使わず、機能性も見た目も優秀なアウターを手掛けるミラノ発のブランドが「セーブ・ザ・ダック」だ。
今やファッション産業において動物福祉の視点は欠くべからざるもの。
設立以来一貫して動物福祉を製品作りの根幹に据える「セーブ・ザ・ダック」の創業者に話を伺った。
時代の共感を呼ぶ“アニマルフリー”のもの作り
創設者兼CEOであり、デザイナーも務めるニコラス・バルジさん。他社ブランドのPRを経験したのちテキスタイルメーカーである家業に携わり、’12年にセーブ・ザ・ダックを設立。プライベートでは長いキャリアを持つサーファーでもある。
「私たちが作るアウターはすべて“100%アニマルフリー”。生地にもパーツにも動物由来の羽毛、皮革、毛皮などはいっさい使っていません」。
そう語るCEOのニコラス・バルジさんは、ミラノで100年以上続くテキスタイルメーカーの3代目でもある。
小さい頃から動物が大好きだったというニコラスさん。いちばん身近なアパレル業界でウールやレザーといった動物由来の素材が使われていることに、彼が複雑な思いを抱いていたであろうことは想像に難くない。
ブランド名が表すとおり「アヒルを救う」ことが設立のきっかけ。この10年で生産した製品をダウン原料に換算すると、2000万羽以上のアヒルを救ったことになるという。
「テクノロジーが発達した今の時代に、はたして動物を原料として考える必要があるのでしょうか。少なくとも、動物がつらい思いをする原料で服を作りたくはありません。
動物、環境、そして人間を尊重する服を作りたい。そんな思いから、2012年にセーブ・ザ・ダックを設立しました」。
独自開発したポリエステルの中綿用素材「プラムテック®︎」。
その主力商品は、独自開発した高機能素材「プラムテックR」を中綿に使用するアウターだ。ジャケット、コート、ベストと、あらゆるニーズに対応する豊富なバリエーションをラインナップ。
またイギリスのエドワード クラッチリーなど多くのブランドとのコラボレーションにより、徐々に認知度を高めてきた。
ブランドを始めてうれしかったことは?ニコラスさんは即座に「お客さまが私たちの価値観に共感し、製品を購入してくれること」と答える。それは具体的な数字にも表れている。
現在直営店はイタリア国内に4店舗、海外に3店舗を構え、商品は世界43カ国で展開。従業員も毎年増員中だ。日本に本格上陸したのは設立から8年目、’20-’21年の秋冬シーズンのこと。
去る9月にオープンした丸ビル1階のポップアップストア。2023年3月31日(金)までの期間限定となる。このほか、今シーズンは全国30以上の商業施設でポップアップストアを展開する。詳細はHPをチェック。
セーブ・ザ・ダックのリサイクル素材(主に表生地の原料)のサプライヤーであり、独占輸入販売を手掛ける帝人フロンティアの担当者、安田樹人さんが当時を振り返る。
「コロナ禍と同時期のスタートだったので、正直不安はありました。しかしながら多くの百貨店やセレクトショップに高い評価をいただき、各所で開催したポップアップストアは商業的にも成功を収めました。
今思えばコロナ禍を経たことで、ファッションを含めた生活様式がよりサステナブルな方向へシフトしていたのかもしれません」。
以降、日本の売り上げは毎年約100%増を達成。セーブ・ザ・ダックがここまで注目されている現状は、今という時代の必然なのかもしれない。
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