▶︎すべての写真を見る サッカーW杯やロシアのウクライナ侵攻、イーロン・マスクのツイッター社買収など、2022年もいろんなニュースが世界を駆け巡った。
その数々を、2023年の扉が開く前に振り返ってみよう。案内人は『Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)』編集長の藤吉雅春さんだ。
教えてもらったのはこの人
藤吉雅春(ふじよしまさはる)●Forbes JAPAN編集長。1993年から雑誌媒体を中心に、政治・経済・社会問題・人物インタビューを中心にノンフィクションライターとして活動。
『Forbes JAPAN』編集長が注目した、今年の“まさか”とは?
① 佐々木投手、プロ野球界28年ぶりの完全試合達成!
Forbes JAPAN 2022年10月号より
今年、千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手が、プロ野球史上16人目となる完全試合を達成した。日本プロ野球では28年ぶり、パ・リーグでは44年ぶりの快挙である。
その活躍ぶりから「令和の怪物」と呼ばれる彼だが、藤吉さんは「完全試合達成まで、名前ぐらいしか知らなかった」と話す。しかし実は、2011年の東日本大震災から続く“物語”があったようで……。
「私は震災直前まで、岩手県の陸前高田で取材をしていたんです。だから東日本大震災の発生には本当に唖然としたし、取材した人もたくさん亡くなりました。
そして震災から約1カ月後、被災地の様子を知るために現地の市議会議員に電話したんですよ。そのとき、電話の後ろから子供たちの声が聞こえたんです。何かと思ったら『子供たちが野球の練習を始めた』と言うんです」。
佐々木投手は陸前高田市出身。小学4年生で被災し、父を亡くした。津波で自宅も流されたが、生き残った仲間たちとすぐに練習を再開したと明かしている。
「そのニュースを見て、『あの日の少年たちの中に、もしかしたら佐々木投手もいたかもしれない』と思いました。被災した子供たちがその後どうなったのかずっと心に残っていたので、あの少年たちが大人になったのかと思うと、気持ちが波立つニュースでした」。
② 新海監督『すずめの戸締まり』が大ヒット!
11月11日、『君の名は。』『秒速5センチメートル』などで知られる新海 誠監督の最新アニメーション映画『すずめの戸締まり』が公開された。公開後3日間で133万1081人を動員するなど快進撃を記録している。
同作の主人公は東北で生まれ、幼少期に東日本大震災に被災した女子高校生、鈴芽(すずめ)。その後、ある青年と出会ったことを機に、「災い」の元となる扉を閉めていくという物語である。
「なんの予備知識もなく作品を鑑賞したのですが、これはまさに東日本大震災のその後を描いた映画なんですよね。人生には向き合わざるをえない過去があり、涙が止まらなくなりました。震災を体験したあの子たちは、1日1日を生きて今があるのだなと感じました。佐々木投手の完全試合と『すずめの戸締まり』のヒットは、ともに震災の『その後』を考えさせられるニュースでした」。
③ アリババ創業者ジャック・マー氏、東京に長期滞在!
Forbes JAPAN 2016年7月号より
中国のインターネット通販最大手、アリババ集団の創業者、馬雲(ジャック・マー)氏が、今年春から半年以上、東京で隠遁生活をしていると報じられた。
かつて中国一の富豪として知られたマー氏だが、最近は金融政策の方針をめぐって中国政府から目を付けられて、行方をくらましていた。
このニュースに関連して藤吉さんは、日本を訪れる海外富豪の実情を深く知る人物からの情報として、ある意外な町が人気を集めていると語った。それが大阪府富田林市である。
「私たちは普段あまり行く機会がない街ですが、富田林市には400年前の要塞都市の街並みが残されています。中国では文化大革命で多くの遺産が壊されてしまったので、訪れた中国人はすごく驚くのだそうです。しかも、一般の観光客は少ない。
日本人は気付いていませんが、外国人からすると、日本は“ありえないもの”が存在する国なんです。歴史的建造物が多く残り、この治安の良さと水の美味さは他の国にはないものですよね。
加えて円安で物価も安いですから、日本はものすごくお買い得なんです。絶対旅行に行きたくなる。ジャック・マーが逃げたくなる日本って、面白いなと思います」。
2/2