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2022.12.17

ライフ

「誰も通っていない道は切り開き甲斐がある」カヌー銅メダリスト・羽根田卓也さんの言葉



当記事は「The Wordway」の提供記事です。元記事はこちら(第1回第2回第3回)。 
「昨日の自分を超える」をテーマに各界のトップランナーの言葉を音声とともに届けるメディア『THE WORDWAY』。音声を楽しみたい方はオリジナル版へ。 
今回のアチーバーは、2016年リオデジャネイロ五輪のカヌー・スラロームで銅メダルを獲得した羽根田卓也さんです。

父の影響で小学校時代に競技を始めた羽根田さんは、高校3年時に日本選手権で優勝。卒業後に強国スロバキアに単身渡ると、2016年リオ五輪では日本人、アジア人として初めてメダルを獲得する偉業を成し遂げました。

現在も世界を舞台に活躍し、5度目の五輪となるパリ大会に向けて挑戦を続けています。道なき道を切り開いてきた原動力は何なのか―。冷静さと同居する熱い「WORD」の中に、次なる一歩を踏み出し、壁を乗り越えるヒントを見つけてください。

言葉①「何かを変えることが人生の喜び。僕にとっては、それがたまたまカヌーだった」



Q:リオ五輪の羽根田さんのメダル獲得で「カヌー」という競技に大きな注目が集まりました。小学生の時から一筋に向き合ってきたその魅力について、まずは聞かせてください。

最大の魅力でもある激流なんですが、間近にすると自分の背より何倍もありますし、その怖さが抜けるまではなかなかカヌーの事が好きになれませんでした。

それが中学2、3年ですかね、結構時間がかかったんですけど、その激流を克服しきった時に、その魅力に取り憑かれました。

タイム競技のスリルもありながら、アウトドア競技ならではの迫力もある。水の上に浮かぶという非日常の気持ち良さや、激流を操って制し、自分のカヌーを思うようにスピーディーに進めていくという達成感、本当にいろんな要素が複雑に詰まった素晴らしい競技だと思っています。



Q:高校3年時には日本選手権で優勝し、さらなら高みを目指してスロバキアに渡ったと聞きました。非常に勇気がいる決断だったように思うのですが。

高校3年間、本当に競技に打ち込んできて、おそらく自分の競技人生の中で一番練習量が多かったですし、自分より練習している人間がいてたまるかという気持ちで毎日過ごしていました。

ただ、目標にしていた高校3年生の国際大会で、すごく手応えはあったけど、このまま日本の環境にいては自分の目指すレベルには到達できない、海外の選手に勝って活躍することはできないと感じたんです。その大会をきっかけに日本を出たいという気持ちがすごく強くなりました。

Q:結果的には、スロバキア留学によって国際大会で戦える確かな技術を身につけ、オリンピックの銅メダルをたぐり寄せました。10年以上におよんだスロバキアでの生活では、言葉や文化の違いなど、苦労もあったと思うのですが。

自分にとっても馴染みのない国でしたし、寂しい思いをしたり、言葉でも苦労は多かったですし、「来なければ良かった」「もう帰りたい」と思ったことは一度や二度ではありません。

ただ、大変な反面、大変な生活の中でもその中に充実感があって、それを乗り越えた時の達成感っていうのは、やっぱりこの厳しい道を選んだからこそ得られたものかなと思います。



Q:羽根田さんは、ネガティブな時期、うまくいかない時期を乗り越える際にどのようなことを意識していますか?

自分がスロバキアで、嫌になってしまったり本当に大変だなと感じた時は、「なぜ自分がスロバキアに来たのか、何を成し遂げたいのか」と常に自分に問いかけるようにしていました。

(それ以外にも)街の中で子供達から指差して笑われたりといった差別を受けたこともあります。でも、そういった悔しさを意に介してる時間はないというか、「自分は何しにここに来たんだ」って問い続けることで、気持ちを強く保ってたというところはありますね。

Q:キャリアを振り返ってみたときに、羽根田さんが歩み続けられた理由はどこにあると思いますか?

何かを変えることというのは、どの領域においても人生の喜びだと思うんです。それがたまたま自分とってはこのカヌー競技っていうものだっただけで、正直、これがカヌーじゃなくても多分全然良かったと思っています。

カヌーが楽しい、水の気持ち良さっていうのはもちろんあるんですけど、自分が何かを成し遂げたいという気持ちの対象が、何かやりがいを見つけれるのであれば、カヌーじゃなかったとしても自分はやっていたと思います。

自分は歴史小説がすごく好きで、歴史上の人物の生き様にすごく憧れるところがありまして、何かを変えたりとか、そこに没頭していく、そこの素晴らしさに非常に感化された時期があって、それが自分の大きな原動力かなと思います。


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