言葉②「誰かが通った道は歩きやすいが、何も残っていない。誰も通っていない道は歩きにくいが、多くの世界がある」
Q:五輪のメダルという大きな目標を達成したことで、次の壁に挑む際の考え方や、見える景色に変化はありましたか? いかに自分がカヌーをやることで、波及できるエリアを広げていけるかっていうことをより考えるようになったかなと思います。
実力がついて成績が出れば出るほど、オリンピックで高い所に行けば行くほど、「より自分が貢献できる広い所ってどこなんだろう」と考えるようになりましたね。
Q:羽根田さんが道なき道を歩いてこられた裏側には、その時々の自分自身を客観視し、セルフコーチングできる力があったからではないかと感じます。 そこは、意識的にやるようにしてますね。こういう練習がしたい、こういう漕ぎがしたいっていう思いつきというのはたくさんあったんですけど、大体それは思いつきでしかなくて、やっぱり掘り下げてみると何の根拠も何の説得力もなかったりで。
じゃあなぜそれをやるのか、それが良いとされているのかを解いていくと、もっと洗練されていって、本当に自分にとってしなければいけないことが見えてくるんじゃないかなと思っています。
Q:意図的に客観視する先は、自分自身の内側だけでなく、置かれた状況もですか? そうですね。日本とスロバキアの環境の差を目の当たりにしたからこそ、そう思うのかもしれないのです。自分は環境が全てだと思っている部分があるんです。
性善説といいますか、スポーツにおいても、その人が悪いんじゃなくて、環境で差が出てくると思うんです。
Q:成長するために大事なのは、いかによりよい環境に身を置けるかだと? 環境は大事です。ただ、環境を選ぶことは自分でできると思うので、そこに関してはやっぱり自分の意思、足が大切になるんだと思いますね。
18歳でスロバキアに行ってからは、オリンピックチャンピオンが自分と同じフィールドで練習していたり、そのチャンピオンを育てたコーチと話ができたり、そういった気づきだとか、自分の意識を高める環境に自ら飛び込んでいくことが大切なんじゃないかなと思います。
Q:羽根田さんはどのような思いで、行動に移したのですか? カヌーは自分の前にあまり道がなかった世界だったので、そういった意味で切り開き甲斐があるというか、誰かが通った道って通りやすいですけど、そこにはもうあまり何も残っていなかったりしますし、カヌーに関しては誰も歩いてなくて歩きづらいけど、やっぱりそこにまだいろんな物があったりとかっていう世界があったので、そこは頑張って良かったなと思いますね。
Q:羽根田さんが、メダルを取ったことで、日本国内のカヌーへの目は変わりました。羽根田さんの背中を追いかける後輩の環境を変えられたことに喜びもあったのではないですか? やっぱり自分はカヌー競技を知ってもらうことを何より意識してやっていたので、メダルを獲って多くの人から「見たことある」って言ってもらったり、リオの後、今まででは考えられなかったような方々、観客の方々が来てくれたり。
自分の目標であった知ってもらうってことに関してはすごく変わったと思うので、そこが何より嬉しいですかね。
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