12時間以上働くワーカーホリック。DJ・作曲活動も
Daft Punkに最も影響を受けたという武藤さんは大の音楽好きで、取材中も爆音を鳴らした。最近はバスケのBリーグ「さいたまブロンコス」のテーマソングを作曲。開幕戦ではDJも披露した。
自身を「ワーカーホリック」と呼ぶほど仕事熱心で、1日の労働時間は約12時間。同時進行しているクリエイティブプロジェクトは約15件にのぼり、最近は作曲活動も増やしている。
「視線入力ソフトで、企画書の作成から曲の作詞・作曲、ジャケットやファッションのデザイン、DJまですべてのクリエティブワークをこなしています」。
目を酷使すればそれだけ体に負荷がかかるが、武藤さんはそれでもスピードを重視する。
「先は約束されていないので、今、この瞬間に生み出せるアイデアは今すぐに形にしていきたいんです。仕事の早さはいつも驚かれますね」。
ロックミュージシャン・清春とコラボしたセットアップ。闘病生活の実体験や病院で出会う患者の様子からアイデアを得た。サイドから全開閉できるジッパーなど着脱しやすい機能が詰まっている。
次に挑戦するのは「脳波コミュニケーション」
武藤さんが最も恐れている未来。それは「TLS」の状態になることだ。
ALSは病状が進行すると、まぶたや眼球も動かなくなる「TLS(Totally Locked-in Syndrome)=完全閉じ込め症候群」になり、目を自力で開くことができなくなる。
人の声は聞こえる、腹もすく、トイレにも行きたい、季節感もわかる。すべてを今までどおり感じるのに、それを誰かに伝えたり表現したりすることができなくなってしまうのだ。
「絶望なんて言葉ではとうてい言い表せません。僕たちが最も恐怖を抱いている最終的な段階がTLSで、実際に僕の仲間もTLSで苦しんでいます。
TLS状態になったとしても、どうにか自分らしくいたい。だから、脳波でコミュニケーションが取れる未来を目指す『NOUPATHY(脳パシー)』というプロジェクトを立ち上げました」。
電通サイエンスジャムと共同で開発を進めている「NOUPATHY」。平たくいうと、脳波を読み取ることで人の意思を認識するコミュニケーションツールである。
事前にコマンドを設定しておけば「飲み物を飲みたい」「トイレにいきたい」といった意思を身近な人に伝達できる仕組みだ。
11月23日には、自分の分身となるロボットを脳波で操作して接客する、世界発のアパレルポップアップストアの公開実験も成功させた。現在は、次なるビッグイベントの準備も進めている。
「来年の6月18日、世界ALS DAYに合わせて、僕らの活動を凝縮した過去最大のALS啓発音楽フェスの開催に挑戦します。クラウドファンディングでチケットの発売を開始しました。ぜひ多くの方にご参加いただきたいと思っています。応援どうぞよろしくお願いいたします」。
音楽フェスMOVE FES.2023
ALSクリエイター武藤将胤がプロデューサーを務めるALS啓発音楽フェスMOVE FES.を、過去最大規模でリアル・配信・メタバースで開催。最新のLEDテクノロジーを駆使した音楽ライブ、ALSトークショー、分身ロボットポップアップストア、VRアート等を通じて、未来を切り拓く希望のメッセージを届ける。詳細はコチラ。
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ALS患者の未来を拓くことは、あらゆる病気と闘っている人々の希望につながる。武藤さんはハンディキャップを背負った仲間の未来や社会を明るくするアイデアを形にするため、今日もフル回転で思考している。