▶︎すべての写真を見る 登山やスノースポーツ、キャンプなど、アウトドアを楽しむ諸兄であれば間違いなくお世話になっているであろう「シェルジャケット」。
その優れた撥水性や防水透湿性は広く認知されているが、ケア方法に関してはあまり知られていない。「洗うと機能が落ちるのでは?」などと思い込んでいる人も少なくないだろう。
結論から言うと、それは完全なる誤解だ。
「シェルはこまめに洗濯した方が本来の機能性が保てるんです」と話すのは、パタゴニア日本支社の内野宗一郎さん。彼にシェルのクリーニング方法を聞いた。
話を聞いたのはこの人
内野宗一郎さん内野宗一郎さん●パタゴニア日本支社 カテゴリーマーケティング アシスタントマネージャー。25歳でパタゴニアに入社するまでは、お金が貯まったら仕事を辞めてふらふら旅をするのがルーティンだった元ボヘミアン。入社後は広く浅くさまざまなアウトドアスポーツを楽しむ中、特に熱中したのがスノーボード。現在は山に近い環境で暮らすことと仕事の両立を模索中。
「水の弾きが悪い」は洗濯のサイン
そもそもシェルの機能性は永遠ではない。ギアと同じように、手入れを何もせずに使い続ければ劣化し、もともとの撥水性や透湿性は次第に発揮されなくなっていく。
シェルの機能性を損なう原因となるのが、空気中の見えない埃や泥などの汚れ、またこすれによる生地の摩耗だ。
防水生地は、外からの雨風を防ぐことが得意な一方で、コットンなどの天然繊維に比べると、内側に湿気や汗がたまりやすい。
「濡れたときウェアにベタッと水が残る状態になってしまうと、表面にもう一層、膜ができているということ。すると内側から汗や湿気が放出しにくくなるので『水が浸透しているのかも』と錯覚してしまう恐れがあります。
シェルに大きな穴でも空いていない限り、水が浸透することはないんです。それは単純に湿気が内側に溜まっている状態。体が冷えやすくなるなど、フィールドでの致命的なリスクを誘発しかねないんですよ」。
内野さん曰く「水の弾きが悪い」「シェルの一部分だけ水が玉になって落ちてこない」といった状態になったら、目立った汚れがなくても洗濯したほうがいいようだ。
自宅でできるシェルの簡単洗濯術
では具体的にどう洗うのだろうか。
「特にクリーニングなどに出す必要はありません。ご家庭でも十分行えますよ」と内野さん。
実は、シェルの洗う方法は非常に簡単。
基本的には①洗濯機で汚れを落としてから、②しっかりと自然乾燥させ、③乾燥機で熱を加えてあげればいい。ただ、いくつか注意点があるので順に紹介していこう。
洗濯機で洗う前に、ジャケットのジップや面ファスナーをすべて閉じ、裾のドローコードも元に戻す。
汚れがひどい部分は柔らかいスポンジなどを使って、40〜50度のお湯であらかじめ手洗いしておこう。
ケアのポイントはここ!
① 内側生地の剥離を防ぐケア | 肌に直接触れる内側部分は、特に汗が溜まりやすく、これが内側生地の剥離につながる。夏の登山では、袖口から滴るほど汗をかくこともあるので手首部分には注意が必要だ。また、首部分も上までジップを閉めて着用した際、肌との摩擦や汚れに加え、吐く息によるニオイにも注意したい。洗濯でしっかり汚れを落とすことが大事。 | ② 撥水加工を蘇らせるケア | 肩や腰などハーネスのあたる部分に注意。汚れだけでなく擦れも撥水加工の劣化に影響する。汗が溜まりやすい背中も要注意だ。洗濯のあと、熱を加えて撥水加工を蘇らせる必要がある。 |
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汚れがひどい場合はほかの衣類とは分けて洗うほうが望ましい。
必ずしもアウトドア製品専用の洗剤を使う必要ないが、中性洗剤を選んだほうがいい。柔軟剤や漂白剤の入ってないことを確かめるのも大事だ。なるべく液体洗剤を使用し、粉末を使う場合はしっかり溶かしてから洗濯機に入れよう。
洗濯機の設定にも注意すべきポイントがある。
洗剤がしっかり落ちるようすすぎは十分に行い、脱水はできるだけしないでおこう(どうしても脱水したい場合は、短時間に留めておくこと)。
シェルの生地の性質上、脱水時に遠心力がかかって洗濯機自体に負荷がかかるためだ。洗濯機から取り出したら、風呂場などでしっかり水を切って乾燥させていく。
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