テックマジック 代表取締役社長兼CEO 白木裕士さん Age 35●1987年、愛知県生まれ。ボストンコンサルティンググループ日本支社で、新規事業構築、ポートフォリオマネージメント、グローバル戦略などのプロジェクトを経験。2018年に同社を創業。
▶︎すべての画像を見る 「外食産業における慢性的な人手不足と、利益率の低さ。この社会的課題を解決したいとテックマジックを設立しました」。
そう語るのは代表取締役社長の白木裕士さん。解決のための具体的ソリューションはずばり、ロボットだ。
今年6月、ロボットが調理するスパゲッティ専門店が東京・丸の内にオープンし話題に。ロボットがパスタを茹で、厨房内を高速移動して具材とソースを合わせ、フライパンで加熱。洗浄もロボット自身が行う。
調理過程で人の手が加わるのは盛りつけだけだ。その一連の作業を行うロボットを作るのが、テックマジックだ。
調理用および業務用ロボットの企画・設計・開発をし、ロボットを活用した企業へのソリューション事業を展開する「テックマジック」。ソフトとハードの両面から取り組むことで解決困難だった外食産業の課題に取り組み「テクノロジーによる持続可能な食インフラ社会」を目指す。東京都江東区に本社オフィスを、愛知県豊田市に開発オフィスを置く。
「名前は『PーRobo(ピーロボ)』といいます。Pはパスタの意味。私たちが手掛けるのはロボットの企画、設計、開発で、ハードウェアの製造は国内の外部工場に委託しています。iPhoneを設計するアップルのようなものです」。
このロボットを導入すれば、スタッフ1〜2名分の作業を省人化できるという。また材料の分量や、茹でる、炒めるといった調理時間のばらつきがないから、味の再現性がきわめて高くなる。
つまり、品質の安定した料理を提供できるというわけだ。麺類であれば、パスタだけではなく、そば、うどん、ラーメンなどにも対応していく予定だ。
「外食企業の方々は、ほぼ100%が人手不足を産業課題だと認識しているので、ロボットの導入に興味を示してくれています。意外なことに、今のところ飲食店のお客さんからも、ロボットが料理を作ることに否定的な声はほとんど聞こえません」。
テックマジックではこの「PーRobo」を筆頭に、茹で、炒め、揚げの工程を自動化できる調理用ロボットの設計・開発を手掛けている。食器の洗浄・仕分け、料理の盛りつけをするロボットも大手食品メーカーと開発した。導入した企業から高い評価を得ているという。
ジャケット8万8000円/ホワイトマウンテニアリング 03-6416-5381、デニム6万7100円/ビズビム 03-5468-5424、スウェットは私物
ちなみに「PーRobo」に組み込まれる冷蔵庫や加熱用のIHは国内メーカーのものを採用。「日本のモノ作りのレベルは世界でもトップクラス」だと語る白木さん。
「そして、これほど食文化が豊かな国もほかにないと思います。将来的にはこの日本の食文化と料理を、ロボット技術とともにグローバルに発信していきたい。人が移動しなくても地球の裏側で、全く同じ料理を再現できるようになります」。
日本が世界をリードする分野にできるはずだと、その道筋を明確に説明してくれる。そこには誇張がないことが伝わってくる。
ただ、少しだけ懸念してしまうのだ。ロボットに仕事を奪われてしまったら、人が不要になってしまうのではないかと。
「それは心配に及びません(笑)。ロボットにまかせられることはまかせればいいのです。時間やコストが効率化された分、人は余裕を持ってその感性や創造性を発揮できるはず。
ロボットを使うことで逆に人の価値は高まっていくのです」。
日本の高機能ファブリックを我々好みのデザインで ジャケット8万8000円/ホワイトマウンテニアリング 03-6416-5381
機能性とデザインを両立した服を発信するホワイトマウンテニアリング。白木さんが着こなしてくれたのは、防水性、防風性、透湿性に優れた高機能ファブリック「サイトス」を採用したジャケットだ。
日本が誇る素材メーカーの小松マテーレが開発した素材である。
「ロボットを製作するメーカーと同じように、日本のアパレルブランドも品質が非常に優れているという印象があります。細部のディテールやデザインにこだわるところも似ていますよね」(白木さん)。