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2022.11.20

ファッション

ファストファッションが大量生産・大量消費を食い止める。H&Mが牽引する循環型素材の最前線


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エイチ・アンド・エム(以下H&M)がサステナブルな取り組みに注力し始めたのは今からおよそ20年以上前にさかのぼる。

未来に対する視点を明確に意識して成長を続けてきたその経験値があるからこそ、今まさにファッションSDGsのシーンを牽引する存在になっているのだ。つまり、昨日今日サステナブルを始めたわけではないのである。

その取り組みは多岐に及ぶ。気候変動への影響を実質ゼロにするためのあらゆる改革。化学薬品などの毒性を排除したファッションの追求。労働環境の改善と労働者の人権尊重。

今回はその中から素材、とりわけ循環型といわれる素材について焦点を当てよう。



H&Mの素材に対する基本的な考え方を簡潔な言葉にすれば、「新たに資源を採取して作るのではなく、すでにあるものを資源として再利用すること」である。それにより廃棄物を減らし、資源の保護につなげることができるというわけだ。

もちろんその志向は単なる概念ではなく、具体的な数字を伴って実現へと進んでいる。2030年までに使用するすべての素材をリサイクル素材、またはよりサステナブルを意識して調達された素材へと切り替えることが目標。現在は約80%が切り替え済みで、残りは約20%にまでこぎ着けた。

特にリサイクル素材への変換が加速。’20年には使用するサステナブル素材全体の5.8%を占めるにとどまっていたが、翌’21年には17.9%へと急速にアップした。

メンズの中で初めて「CIRCULOSE レーヨン」や「テンセル リヨセル」を使用したデニムジャケット。仕上げにはより環境負荷の少ない洗浄技術を採用している。7999円/エイチ・アンド・エム 0120-866-201 

メンズの中で初めて「CIRCULOSE レーヨン」や「テンセル リヨセル」を使用したデニムジャケット。仕上げにはより環境負荷の少ない洗浄技術を採用している。7999円/エイチ・アンド・エム 0120-866-201 


その主要な素材が、上のデニムジャケットに使用されているリサイクルコットンと、チェックのボアジャケットに使用されているリサイクルポリエステルだ。

コットンのほうは本来廃棄される予定だった古着や残布、綿くずなどを利用。ポリエステルのほうは主にペットボトルや石油由来の廃棄物から作られている。

ボアジャケットの素材はリサイクルポリエステル100%だ。6999円/エイチ・アンド・エム 0120-866-201

ボアジャケットの素材はリサイクルポリエステル100%だ。6999円/エイチ・アンド・エム 0120-866-201


ほかに着古したデニムや木材由来のセルロース繊維「CIRCULOSE レーヨン」、アップサイクルされた綿くずと木材から作られる「テンセル リヨセル」など、さまざまなリサイクル素材の積極的な活用を推進している。

ちなみに素材のみならず、服そのものにも循環の流れをつくり出していることを加筆しておきたい。H&Mの全店舗では、ブランドや状態を問わず不要になった衣類を回収する「古着回収サービス」を展開。

「大量生産・大量消費」がファッション業界全体の重要な課題となっているなか、H&Mはその地道な努力により、「循環・再利用」のイメージをカスタマーに定着させつつある。その未来志向に賛同し、これからの動向にさらに注目したいと思う。

清水健吾、干田哲平、高橋絵里奈=写真 梶 雄太、来田拓也、松平浩市=スタイリング 加瀬友重、高村将司、オオサワ系、安部 毅、増山直樹、磯村真介(100miler)、早渕智之、大木武康、大関祐詞、今野 壘=文

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