▶︎すべての画像を見る アウトドアブランドにとってダウンは欠くことのできない素材だ。主にダウンジャケットや寝袋に使用されるが、その保温力と軽さにおいて右に出る素材がいまだに存在しないからである。
そんな素材のリサイクルを推進しているのが、ご存じザ・ノース・フェイス。2013年よりダウンウェアの回収をスタートし、「グリーンダウン」というリサイクル素材へと再生させている。
そもそもダウンは、製品の素材として使うまでに長い作業工程が必要。ガチョウやアヒルの羽毛が原料となるわけだが、動物の体毛だから初めは汚れている。まずはその原毛についた細かなごみや酸化した脂肪分、砂などを取り除く。
そしてきれいな水と洗剤で洗濯とすすぎを繰り返し、乾燥。そして原毛が冷めたところで再び細かいチリやホコリを取り除く。最後にダウン(胸毛)とフェザー(羽根)に分ける。ここまでしてようやく、製品に使用できるクオリティの素材となる。
ザ・ノース・フェイスによる「グリーンダウン」は、ごく簡単に言えば、この製品化に向かう初期ステップのもっとも手間のかかる工程の一部を省略できる素材。
それによって、サプライチェーンおよび作業工程時に発生する二酸化炭素や水の使用を、大幅に抑えることができるのだ。
特殊セラミックスの遠赤外線効果により優れた保温性能が持続する「光電子ダウン」を採用したバルトロ ライト ジャケット。もちろん「グリーンダウン」をミックス。真冬の天体観測や雪上ハイクにも対応し、保温力は抜群だ。6万2700円/ザ・ノース・フェイス(ゴールドウイン カスタマーサービスセンター 0120-307-560)
しかもそのダウンの品質は新品よりも優れている。使用済みのダウンは家庭での洗濯などにより、ヴァージンダウンと比べて初期の不純物が既に取り除かれた状態。そのうえで再び汚れやホコリを除去して選別をかけ、より良質なダウンへと生まれ変わるのだ。
この「グリーンダウン」の生産を手掛けているのは三重県に工場を置く国内トップの羽毛加工メーカー、河田フェザー。1世紀以上にわたり培ってきた精毛技術は、日本が世界に誇るべきクラフツマンシップといえる。国内の技術力を大事にして磨いていくという姿勢は、SDGsの8番「成長・雇用」にもつながる。
この「グリーンダウン」は現在、「マウンテンダウンジャケット」をはじめとした21の商品に採用。その商品にはグリーンカラーの縫い付けネームが付いているので、ぜひともチェックを。
ダウン製品の回収ボックスを店舗に設置。
またダウンウェアの回収は、日本全国の店舗で受け付けている。持ち込めば500円のクーポンを発行してくれるのが何ともうれしい。
ダウンの寿命は人間の平均寿命よりも長いといわれている。慣れ親しんできたダウンについて改めて、リサイクルを心に留めてほしいと思う。
オーシャンズとサステナブル 2019年10月号。
オーシャンズでは本誌連載「サステナ服通信」をはじめ、さまざまな企画でファッションSDGsの現在地を伝えてきた。
10年前から状況は明らかに変化してきており、今や服作りにおいてその視点は欠かせないものとなっている。さらに我々も心のどこかにサステナブルな志向を持ちながら、服を選び始めている。
ファッションの未来のために今できることを、これからも続けていきたい。