好きな戦い方は理詰めで攻める“兵法”
「僕は“兵法”がすごく好きなんです。兵法って勝ち戦しかしちゃダメなんですよ。戦うならアウェーじゃなくホームで、相手の戦い方にも乗らないのが基本。
絵の世界線ってなるとディズニーがいて、向こうは製作費に300億円とかかけられる。じゃあ、ハリウッドやディズニーのような大資本が力を出せないところはどこかって考えたら、絵本でした」。
確実な打ち手を一つひとつ積み上げていく戦い方。西野さんにとって絵本は世界に勝つための手段にすぎなかったが、まずはその手段で勝つ必要があった。
5年をかけて完成させた初めての絵本
「絵本を描くってなったら、競合は絵本作家ですよね。僕にはコネやツテがないから、同じ戦い方をすれば負ける確率が上がる。だから、絵本作家ができないことをやろうって考えたんです。それが、時間をかけるということでした」。
絵本で生計を立てる場合、一冊にかけられる時間は限られる。ならば、と西野さんは“時間”を戦場にした。絵を描く技術や才能では負けているが、時間には余裕があるからだ。
「だから、物理的に時間がかかる描き方を選ぼうと思って『一番、細いペンをください』って言って買ったのが0.03ミリのペンでした」。
それから独学で絵を学び、西野さんが初めて完成させた絵本は2009年に出版した『Dr.インクの星空キネマ』。人が寝ている間も正月も、バラエティ番組の収録の合間も絵を描き続け、80ページの絵本を5年の歳月をかけて描き上げた。
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