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サステナブルでありファッショナブルなTシャツ

クリエイティブディレクターの染谷裕亮さん。今後は子供服なども作っていきたいという。「レディスのアイテムですが、次の2023年春夏シーズンではTAKEFU100%の服が登場しますのでお楽しみに」。

クリエイティブディレクターの染谷裕亮さん。今後は子供服なども作っていきたいという。「レディスのアイテムですが、次の2023年春夏シーズンではTAKEFU100%の服が登場しますのでお楽しみに」。


さて先述したようにTAKEFUはきわめて繊細な素材だ。傷に直接触れる医療用ガーゼとしては完璧といえる特性を持つ。

だが日常服にはどうか。デリケートな繊維ゆえ伸びやすく、毛玉になりやすい。つまり扱いが難しいのだ。

「まずはベーシックなTシャツを作ろうと思いました。適度なハリと強度を持ち、カジュアルだけど上品さを併せ持つTシャツです。そのためにはどんな糸で、どんな生地を作ればいいのか。

懇意にしている大阪の大正紡績、そして和歌山のテキスタイルメーカーであるエイガールズとともに、製品開発がスタートしました」。

ごく簡単に言ってしまえば、Tシャツを作るのに素材がTAKEFUだけでは柔らかすぎる。ほかの繊維をミックスしなければならないが、今の時代に新しく始めるブランドとして「合成繊維は使わない」と決めていた。

やはり竹には天然繊維を。そこで、大正紡績が豊富な種類を扱い、またそのノウハウを蓄積しているオーガニックコットンを使用することになった。そこからはコットンの種類、混率、紡績方法の試行錯誤である。

結論から言うと、3度作り直してようやく納得できるものに仕上がったそうだ。

製品パッケージには新宿と渋谷の街並みをプリント。「この東京をいつかサステナブルな街にしたい」という思いが込められている。

製品パッケージには新宿と渋谷の街並みをプリント。「この東京をいつかサステナブルな街にしたい」という思いが込められている。


「紡績会社もテキスタイルメーカーも、優れた技術と経験を持つ老舗です。だから最初からある程度のものができると思っていました。

でもサンプル第1号は、何というかデロンデロンの質感で(笑)。Tシャツというより肌着みたいだったんです。TAKEFUという未知の素材は、やはり一筋縄ではいきませんでした」。

これが’20年の夏頃の話。当時、TAKEFUを使うこと、Tシャツを作ること、ブランドを始めることは決まっていたが、肝心のブランド名が決まっていなかった。

だがあるとき、天啓のようにテイクスという言葉が降りてきたのだという。「今も鮮明に覚えていますが、風呂に入っているときでした(笑)」と染谷さん。

「服用する(=take medicine)」という言葉に含まれる“take”。それにsをつければ竹の複数形ともとれる。テイクス(=takes.)という名前は、「竹を使った服で人々を健康にしたい」というブランドのコンセプトを端的かつ十全に表現していると思う。

翌’21年4月にウェブサイトをオープンし、ブランドをローンチ。同年8月にはロンハーマンの主要店舗でポップアップストアを開催した。

Tシャツを中心とした小規模だが誠実なコレクションは、サステナブルへの関心が高い人たちと、ファッション感度が高い人たちの両方に受け入れられた。

「Tシャツは首回りで個性が決まります。あらゆるTシャツのネックをチェックして、今のデザインと作りに行き着きました。一枚で着ても、ジャケットの中に着てもきれいに見えるTシャツです」。

ちなみに首回りの切り替えはリブ編みの生地ではなく、ボディと共生地である。「リブだとカジュアル感が強くなる」のがその理由。ステッチが2本ではなく1本なのも同じ理由だ。

ただ共生地だと伸縮性に劣るため頭の出し入れがしにくくなる。そこで首の後ろをやや広めに開けて着脱しやすい仕立てに。服としての完成度の高さが、ファッション好きを納得させる要因なのである。


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