サーフィンとヨガは表裏一体。陰陽の哲学
サーフィン同様、ジェリーの人生にはヨガの存在が欠かせない。
ヨガとの出合いは約半世紀も前に遡るが、当時のハワイでヨガはあまりにもマイナーだった。しかし、ジェリーはヨガの動きや呼吸は必ずサーフィンの上達に役立つと確信。すぐさまヨガの本を買い漁り、ライフスタイルに取り入れた。
実際、ジェリーはヨガの呼吸を実践することで、普通のサーファーでは到底乗りこなせない荒波を制した。パイプラインの大波に乗るその姿は驚くほど優雅で、まるで写真で切り取ったかのように静かである。
「“ハタヨガ”(ヨガの一様式)はスピリチュアルな部分も多かった。今のヨガには足りていないけど、僕はスピリチュアルな面もとても大事だと感じている。サーフィンで役立っているのも、基本的にはヨガのメンタル的な部分なんだ。
例えば、ワイプアウトして息ができないとドキドキしてしまうけど、ヨガの“プラーナ”という呼吸があれば、落ち着いて海面に向かえる。呼吸をするということは、周りにあるエネルギーを体内に入れることなんだよ」。
もちろん簡単に真似できることではないが、理屈としては意外にシンプルである。
「肉体は疲れていても、体内にエネルギーが入っていれば何度もトライできる。クタクタで帰宅しても、友達から遊びの誘いがきたら一気に元気になるでしょう? ヨガは、そういうスピリチュアルな部分を大事にしているんだ」。
激しいサーフィンの動きと静かなヨガの呼吸は一見、正反対に見える。しかし、実は陰陽(Yin Yang)を表す太極図のように表裏一体なのだとジェリーは話す。
「陰陽のコンセプトは、左右の異なる力をひとつにすること。男性と女性、火と水、生と死、海と山……これらは本当は反対の力ではなく、本来ひとつになろうとしている力。もしひとつになれれば、ただ足し合わせるよりも大きな力になる。
陰と陽のハーモニーが健康を保つし、常にそのバランスは動いているからチューニングし続けなけばならない。太極図のマークには、それぞれの領域にお互いの要素が“点”となって入り込んでいるでしょう? それを忘れずにバランスを取ること。人間も自然の一部として、そのバランスが求められているんだよ」。
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ジェリー・ロペスの人生観を描いたドキュメンタリー映画『ジェリー・ロペスの陰と陽』。フィルムは9月22日(木)、パタゴニア公式サイトおよびYouTubeにて公開予定となっている。
昔話の苦手な男が精一杯に語った伝説の数々を、その目に焼き付けよう。