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2022.09.03

ライフ

女優・木村文乃が語るダイビングの魅力「海に潜ると、“素の私”になれる」


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ダイビングを始めて今年で4年目。しかしすでに200本をも潜るほど夢中になっているという女優の木村文乃さん。

なにが彼女を海へと誘うのか。詳しく伺った。

仕事に邁進する生活から、公私のバランスがいい生活へ

今年に入り、ほぼ毎日インスタグラムに投稿がある。そこにあるのは各地の海で潜るダイバーの姿。画像はほぼプライベートで残されたもので、「これらは役ではない素の私です」というように、海時間を楽しむ木村文乃さんが写し出されている。

知人に誘われダイビングを始めたのは2018年。プライベートを充実させていきたいと考えていたタイミングだった。以来、経験回数は足かけ4年で200本に及ぶ。

北の海のほうが好きだと言い、北海道のウトロでは流氷の海に潜った。

「不作の年だったようで、地元の人も“これは立派な流氷とは言えない”という少し寂しい感じでした。でも私にとっては初めての流氷。クリオネもたくさん見られてテンションは上がりっぱなし。

水温はマイナス3℃ほどで、女性は15分ほどで手先が痺れてくるようなんですが、私はアドレナリンのおかげか寒くなくて(笑)。30分以上潜っていました」。

投稿を見ると、ほかにも東北、奥能登、瀬戸内、南西諸島など多くの日本の海を潜っていることがわかる。そしてダイブ後のショットを含めた画像の中には“素顔の木村文乃”がだいぶリラックスして写されている。

一方、今秋には2本の主演映画が公開予定と、充実した生活を送っているように思える。だが実のところ、公私のバランスが取れ出したのはここ数年。それこそダイビングを始めてから、なのだという。

木村さんのキャリアを紐解けば、女優デビューは16歳。’06年公開の映画『アダン』のヒロインオーディションでグランプリを受賞したことがきっかけとなる。以

降、同年公開の映画『風のダドゥ』で主演を務め、 NHKの連続テレビ小説に出演するなど、順調にキャリアを歩んでいくように思えた。しかし訪れたのは不遇な時代。長くアルバイト生活を送っていたことは多くの場で語られるエピソードだ。

転機は23歳。現在の事務所へ移籍して女優として流れに乗れるように。苦労の日々の反動からか、20代は撮影現場と自宅を往復して過ごした。

「とにかく今目の前にある仕事と向き合い、今日より良い明日の自分になれるように一日一日を過ごしていました」と仕事に邁進した。

多くの作品に出演し、主演機会にも恵まれた。受賞歴もある。だが、それほどまで真摯に仕事と向き合った結果、いつの頃か心身のバランスを崩すようになっていく。

芝居に楽しさを見いだせない。私が本当にしたい仕事とは何だろう。悩みは長く付き纏い、仕事が嫌になり、心が荒んでいった。

主因は、そもそも得意ではなかった対人コミュニケーションがさらに苦痛になったこと。そしてほかに理由があるとすれば、女優という職業の宿命がそうなのかもしれない。

仕事は演じることだ。演じてしまえば、ほかにできることはないに等しい。良し悪しは観るものに委ねられ、称賛を浴びることがあれば逆もあり、反応自体が乏しいことさえある。気心の知れたスタッフはいるが、不安から解放されることはない。

「それに女性の場合、10代や20代にはヒロイン役が用意され、いつからか生徒ではなく先生になり、母になっている。そういったある程度の流れがあるんです。

枠の数もなんとなく決まっている。というなかで、40代や50代ではどのような仕事がくるのだろう。そう考えると、ちょっと怖くなってしまうんです」。

仕事一辺倒の暮らしに生きづらさを感じ、生活と仕事が同義という生き方を改めたいと思った。女優から離れたときに、ひとりの人間としていられる方法を模索し、出会ったのがダイビングだった。


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