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「なぜ」変化しなければならないのか

サイモン・シネックは、Apple社やキング牧師やライト兄弟の言説を例に挙げて、人の心を動かすのであれば「why(なぜするのか:目的)→how(どうやってするのか:方法論)→what(何をするのか:具体的なアクション)」の順番で説明をするべきだと言っています。

今回のビジョン変更についても、さまざまな議論をされてこられて、結果として新しいビジョンに結びついたのだと思います。

それなのに、最終的な結論だけを示して「こういうビジョンになったから守ってくださいね」とwhatだけを示しても、いきなり共感することは難しいでしょう。内容にかかわらず、心理的反発が生じるのが関の山です。
 

「うるさ方」から、衆知を集める

危機感を持ってもらえたら、次に「変革主導チームを築く」べきであるとコッターは言います。

要は、この変革の件に関して意見を持っており、そこでリーダーシップを発揮したいと考える人たちを巻き込むということです。

組織には何事においても一家言持っている人がいます。いわゆる「うるさ方」の人たちです。彼らは、敵に回すと「俺は聞いていない」「違うと思う」などと撒き散らして面倒くさいのですが、仲間に巻き込むと組織内のインフルエンサーとして活躍してくれます。

今からでも遅くはないかもしれないので、今文句を言っている人たちから話を聞いてみてはいかがでしょうか。

主観・妄想・誤解・思い込み……を聞く

率直に「新しいビジョンにあまり共感できていないと聞いています。ビジョンについての理解を深め、改善するために、ぜひ意見を聞かせてほしい」と巻き込むのです。

しかし、それは論破するためではありません。どんなことが共感を阻んでいるのかを知るためです。相手の理屈がおかしくても、「なるほど、なるほど」と傾聴して、相手が持っている主観・妄想・誤解・思い込みなどの彼らの「心理的事実」を集めるのです。

それがわかれば、説得のしようがあります。正しいことを喧伝するだけでは、思い込みに包まれた反対者の耳には届きません。彼らの心理的事実に寄り添い、そこから説得をスタートするのです。
 

反対する「本当の理由」に手当をする



新しいビジョンが本当に適切なものなのであれば、それに反対する人の反対理由は非合理なものでしょう。非合理なものを主張する裏側には「本当の理由」があるはずです。

新ビジョン自体に本当は問題なくとも、トップダウンで決めて下ろす方法への反発や、旧ビジョンに対するノスタルジー、自分をないがしろにされたという感覚などから反対しているかもしれません。

それらの「本当の理由」にアプローチして手当てすることができなければ、いつまでたっても議論は平行線でしょう。反対意見の非合理性に憤慨するのではなく、なぜそんな非合理なものを訴えるのかを知るべきなのです。

グラフィックファシリテーター®やまざきゆにこ=イラスト・監修
曽和利光さんとリクルート時代の同期。組織のモヤモヤを描き続けて、ありたい未来を絵筆で支援した数は400超。www.graphic-facilitation.jp


曽和利光=文

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