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アーティストたちの憩いの場

アート体験は、ピカソやシャガールなど、20世紀の巨匠たちが愛した城壁の村「サン・ポール・ド・ヴァンス」を、専門ガイドとともに巡るというものだ。

メインは、マーグ財団美術館。アートディラーだったマーグ夫妻が1964年に創設したもので、海沿いから内陸に20分ほど進むと、豊かな自然に調和するように、ルイ・コルビュジエの弟子ホセ・ルイ・セルトが手掛けた建築が現れる。



ガイド曰く、「単なる美術館ではなく、アーティストにとってのスタジオでもあった」というこの場所には、夫妻の友人でもあったミロやジャコメッティの彫刻、この場で制作されたシャガールの大作などが点在。光、風、音、この土地の気候も感じながら、リラックスした気持ちでそれらに出会うと、アートが本来身近なものであると再認識させられる。

中世の面影が残る村の中心部は、車が入れない徒歩エリアだ。坂のアップダウンが続くが、ショップやギャラリーが並び、散歩が楽しい。小道にプルメリアやジャスミンが咲き誇る様子に、タイから参加したエディターは、「フォトジェニックがすぎる」と連写していた。

歩いてまわるサン・ポール・ド・ヴァンスの中心地(筆者撮影)

歩いてまわるサン・ポール・ド・ヴァンスの中心地(筆者撮影)


「詩人ジャック・プレヴェールが住んでいた家は、いまはAirbnbになっていて、300ユーロほどで泊まれる」「シャガールのお墓には、訪れたユダヤ教徒は石を置いていく」と、豆知識が溢れ出るファトゥさんは、フランスの文化歴史を熟知している政府公認のガイド。同じ時間を過ごすのでも、その情報があるとないで濃度が違う。

冷たいペリエで喉を潤したあとに尋ねたのは、かつて“ピカソの遊び場”と言われたレストラン・ホテルの「ラコンブルドール」。通常はクローズしている時間に、3代目夫人が案内してくれたのだが、オープンテラスを抜けて建物に入ると、そこは別世界。歴史と文化が入り混じる空間に、ピカソ、マティス、カルダーなどの作品がこともなげに飾られていた。

異国情緒漂うエントランスの奥の壁にはピカソのポートレート(筆者撮影)

異国情緒漂うエントランスの奥の壁にはピカソのポートレート(筆者撮影)


さらに奥には、小さくもセンスの良いプール。今でも、ジョージ・クルーニーやレオナルド・ディカプリオなどセレブやアーティストが訪れる“隠れ家”というのも納得だ。

ワインセラーという知の宝庫

ワイン体験の舞台は、世界中から富裕層が集まるモナコ・モンテカルロの「ホテル・ドゥ・パリ」。その地下13mに位置する巨大なワインセラーだ。通常公開されていな場所へ専用のエレベーターで降りると、「冷房なしでも一年中14℃に保たれている」という、ひんやりと、少し湿度のある空間が広がっていた。



そこにずらりと並ぶのは、約35万本のワイン。20年経っても「まだまだ若い」ものもあれば、5年にして「そろそろ」のものあり、3桁万円のものもあれば、数千円ほどの手頃なものもある。その中から「ready to drink」なもののみがワインリストに載り、レストランのゲストに届く。

それを決めるのがセラーを守る8人のソムリエだ。この日案内してくれたフィリップさんはこの道42年のベテラン。購入時の記憶、年別のワインの知識、日頃のテイスティングなど、「すべて頭の中にある」情報から導き出しているという。


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