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2022.08.13

時計

歌舞伎役者・中村歌之助と腕時計。世代をつなぐ3本とともに、今の自分を語る

「パトリモニー・マニュアルワインディング」1950年代のアーカイブを再解釈し、タイムレスなデザインに仕上げた「パトリモニー」。6.8mmという極薄のK18PGケースに、カレンダーも省いたミニマルな2針スタイルを4カ所の楔形インデックスが優美に彩る。K18PGケース、40mm径、手巻き。261万8000円/ヴァシュロン・コンスタンタン 0120-63-1755、カーディガン5万3900円、タイ1万9800円、ベスト、シャツ、パンツすべて参考商品/すべてポロ ラルフ ローレン(ラルフ ローレン 03-6438-5800)

「パトリモニー・マニュアルワインディング」1950年代のアーカイブを再解釈し、タイムレスなデザインに仕上げた「パトリモニー」。6.8mmという極薄のK18PGケースに、カレンダーも省いたミニマルな2針スタイルを4カ所の楔形インデックスが優美に彩る。腕時計 K18PGケース、40mm径、手巻き。261万8000円/ヴァシュロン・コンスタンタン 0120-63-1755、カーディガン5万3900円、タイ1万9800円、ベスト、シャツ、パンツすべて参考商品/すべてポロ ラルフ ローレン(ラルフ ローレン 03-6438-5800)


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普段の舞台とは異なる撮影に戸惑いつつも、カメラの前に立てば凛とする。これが伝統の芸の世界に生きる、奥深さか。

四代目 中村歌之助。3本の時計とファッションが織りなすそれぞれの時間に出会い、今の自分を語る。

歌舞伎役者・中村歌之助と3本の腕時計

思い浮かんだのは、挙措という言葉だ。端正な動作はあくまでも自然体、そこに存在感が浮かび上がる。見られることを常に意識し、磨き上げてきた役者の本領だろう。

「化粧も自分の顔の気に入った側を強調し、片眉を長くするなどします。見得を切るにもどう見えるか。父からも日頃からそれを意識しなさいと言われます」と中村歌之助さんは語る。

聞けば、劇場内は楽屋以外のいたるところに鏡が張られ、役者はそこに映る姿を日々意識するという。舞台に立ったとき、あらゆる方向や距離からどんな見え方をするか。それも自己満足に陥ることなく、できるだけ客観的に見るためだ。

ファッションにも強い興味があり、劇場や稽古場と自宅の移動でも気分転換に好きな服を着るようにしているそうだ。そして洋服を楽しむことで、改めて着物の深遠を実感する。

「着物は着慣れていることもあり、落ち着きますね。生地や柄には意味があり、舞台では季節感や、着替えることで時間の移ろいを表現するにも用いられます。

華やかさにもそんな基本があって、浮世絵を参考にしたり、自分らしく自由にアレンジもできます。若手同士で話すことも多く、原点回帰と改革を繰り返してますね」。

着物を通して、先人の演じてきた役を今自分が演じる誇りを感じる。今回手にした3本の腕時計もこれに通じるのかもしれない。

「ヴァシュロン・コンスタンタンのゴールドの時計は、祖父を思い起こしました。祖父は多くの時計を持っていて、僕たち孫にも形見分けしてくれました。

それはいつも着けるのではなく、大役をやったり、ここ一番の仕事のときは楽屋に祀っておく、お守りのような存在です」。

軽量なセラミックスケースをはじめ、ダイヤル、ストラップをすべて黒で染め上げた武骨な一本。航空計器を彷彿させる合理的なダイヤルレイアウトに優れた装着感のファブリックストラップを備え、パイロット・ウォッチらしい機能美が際立つ。「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ ・トップガン」セラミックスケース、44.5mm径、自動巻き。112万7500円/IWC 0120-05-1868、ニット25万8000円、シャツ9万9000円、肩に掛けたスカーフ22万8000円/すべてザ・ロウ(ザ・ロウ・ジャパン 03-4400-2656)

「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ ・トップガン」軽量なセラミックスケースをはじめ、ダイヤル、ストラップをすべて黒で染め上げた武骨な一本。航空計器を彷彿させる合理的なダイヤルレイアウトに優れた装着感のファブリックストラップを備え、パイロット・ウォッチらしい機能美が際立つ。腕時計 セラミックスケース、44.5mm径、自動巻き。112万7500円/IWC 0120-05-1868、ニット25万8000円、シャツ9万9000円、肩に掛けたスカーフ22万8000円/すべてザ・ロウ(ザ・ロウ・ジャパン 03-4400-2656)


続いてオメガのダイバーズウォッチはブレスレットに注目した。

「父がこんなメタルブレスのスポーツウォッチを着けていたのを覚えています。小さい頃はそれをパチンって着けたり、外したりして遊びました。それこそ大人になったら自分もこういう時計を着けるのかなって思いましたね」。

そしてIWCのパイロット・ウォッチは今の自分のスタイルに合うという。

「黒い服が好きなので、この時計は合わせやすいし、ストラップもカジュアルでオールマイティに使えそうです。普段時計は着けていないのですが、先輩を見ると、時計に合わせて服や靴を選んでいたり、大人っぽくて憧れます」。

1993年に登場し、高い防水性にヘリウムエスケープバルブを装備する。耐傷性に優れるセラミックスのベゼルリングなど本格ダイバーズ機能に加え、1万5000ガウスの高耐磁性を備え、日常使用における実用機能も担保する。今年新たに新色のグリーンも加わった。「シーマスター ダイバー 300M」SSケース、42mm径、自動巻き。74万8000円/オメガ 03-5952-4400、シャツ1万6500円、手に持ったジャケット7万5900円/ともにブルックス ブラザーズ(ブルックス ブラザーズ ジャパン 0120-02-1818)

「シーマスター ダイバー 300M」1993年に登場し、高い防水性にヘリウムエスケープバルブを装備する。耐傷性に優れるセラミックスのベゼルリングなど本格ダイバーズ機能に加え、1万5000ガウスの高耐磁性を備え、日常使用における実用機能も担保する。今年新たに新色のグリーンも加わった。腕時計 SSケース、42mm径、自動巻き。74万8000円/オメガ 03-5952-4400、シャツ1万6500円、手に持ったジャケット7万5900円/ともにブルックス ブラザーズ(ブルックス ブラザーズ ジャパン 0120-02-1818)


奇しくも3本の時計が3世代をつないだ。それはまるで歌舞伎という長大な時間軸のなか、継承される時間との出会いのようだ。

「歌舞伎は歴史を疑似体験するタイムスリップであり、その時代の人物を演じるのは、現代に生きる僕としては大きな課題ですが、さまざまな時間を生きられるのはとてもうれしいことです。

そして大歌舞伎では、小さな子から大先輩の中でお芝居をさせていただきます。それぞれ異なる時間軸が組み合わさった空間を共有することで、引き出しをどんどん増やし、学んだことを後輩にも伝えていきたいと思います」。

この夏はいよいよ八月納涼歌舞伎『新選組』で主役を務める。この納涼歌舞伎は父たちが主体となって始まり、若手が中心になる公演であり、3年ぶりの再開という大事な年だ。

その主演というプレッシャーもさることながら、周囲に支えてもらっている喜びもある。

「中村歌之助ここにあり、じゃないですけれど、お客さまにもぜひこの作品をやった意味があったね、と思っていただきたいですね」。

歌之助さんにとって、挑戦という新たな出会いの、“熱い夏”が始まる。
[Profile]2001年、東京都生まれ。八代目 中村芝翫の三男であり、祖父は七代目 芝翫。橋之助、福之助を兄に持つ。3歳で初舞台を踏み、’16年に四代目 中村歌之助を襲名。手塚治虫の漫画を歌舞伎化した八月納涼歌舞伎『新選組』では、主演・深草丘十郎役を務める。


※本文中における素材の略称は以下のとおり。SS=ステンレススチール、K18=18金、PG=ピンクゴールド

田邊 剛=写真 喜多尾祥之=スタイリング&ディレクション 矢口憲一=ヘアメイク 関 杏輔(フェニーチェ クローゼット)=フィッティング 柴田 充=文 大西陽子=編集 ホテルニューオータニ(東京)=撮影協力

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