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朝霧:クラフトビールで定番の「IPA」は英国のインディアペールエールで、大英帝国がインド領へビールを送る話が起源ですが、世界のブルワーたちが作ってみたいひとつの“スタイル”となっている。日本からも「日本で生まれたあのスタイルを作りたい」と思われるものを生み出したいと、誰もが思っていますね。

中道:海外にあるものを日本人がピックアップし、より深堀りして、元々あるものよりさらに良いものにしていく。日本人の得意な部分ですよね。

それも、真似したものをただ良くするだけでなく、丁寧さや思慮深さなど日本人のDNAとセットになると、自動車でも何でもさらに良くなって世界に出ていく。このパターンは日本文化の一つだと思うほどです。

朝霧:本当にそうだと思います。日本は同質的な社会で、違いに気がつきにくく、だからこそ0→1を作る発明も生まれにくい。ただ、中道さんが言われたように、ただ真似するだけではないですよね。受け手目線で、“感じる力”が強いのではないかと。

「こうなったらもっと便利なのに」「より快適になるのに」と自然に感じられて、そこを目指して少し変えてみようとするからバランスが取れたり、深みが出たり。一つ一つが大きな差異ではないけれど、小さなものを積み上げていくのは歴史的にも非常に得意だと思います。

経済学者の(ヨーゼフ)シュンペーターは、イノベーションという言葉は創造的対応だと定義づけています。ところが、日本ではイノベーションを大変革のように捉えています。私自身、その表現や役割が異なるだけで、日本人は十分にイノベーティブだと感じています。アメリカのように様々な人たちが集まる環境は、違いにも気がつきやすいため、大きな発明も生まれやすい。一方、日本はそこで生まれたものを預かって、ブラッシュアップしていく役割分担ができれば面白そうです。

中道:最後にCOEDOビールの今後について、どのようなイメージを持たれているのか聞かせてください。

朝霧:本当に早いもので、2006年にリブランディングしてから、あっという間に15年が経ってしまいました。今では、「あのシェフが作ったから美味しい」のように、それぞれのブルワリーに対しても組織的認知がなされ信頼が持たれるようになり、その多様性を楽しんでいただけるようになった実感もあります。

COEDOビールとしては、もう一つの個性である、埼玉・川越という地域性を深めたいですね。かつてのお土産物的な地ビールではなく、その地域で愛され、その地域にいるからこそ楽しめるという意味で、ローカルビアという存在になれたらと。

川越駅前にオープンしたCOEDO BREWERY THE RESTAURANT & COEDOKIOSK

川越駅前にオープンしたCOEDO BREWERY THE RESTAURANT & COEDOKIOSK


中道:川越の人もそうだし、埼玉の人にとっても、一つのプライドじゃないですけど、自分たちにはCOEDOがある、みたいなそんな感じのイメージに近いんですかね。

朝霧:そこまではおこがましいですが、今はローカルや手作りの良さが再認識されているので、そこでブルワリーとしての役割を果たせると感じています。

中道:なるほど。最終的には、その先に日本のクラフトビールの新しいスタイルが出来上がっていく。この「日本のスタイル」を作るというのは、ビールに限らず、日本の大きな課題であるとも思います。それがビールからどう発信されるか、楽しみにしています。


小谷紘友=文 鈴木奈央=編集
Forbes JAPAN =記事提供

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