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中華最強を決する戦い「蒙武 vs. 汗明」。そして…

編集部 だとすると、蒙武ではどういったシーンが心に残っていますか?



平山
 蒙武といえば、やはり合従軍と死闘を繰り広げた函谷関の戦いでしょう。楚の総大将、汗明との勝負は戦い全体を左右する重要なものでしたし、蒙武の存在感を中華全土のみならず、読者にも印象付けたのではないでしょうか。

編集部 劣勢の中、よくぞ勝ちきったと思います。



平山 思いますよね。汗明は蒙武よりひと回りも大きいし、力も強い。単純に実力だけを比べれば、おそらく汗明のほうが強いでしょう。

編集部 そうかもしれません。



平山 でも、自分が中華一であることを証明するため正面から立ち向かい、ボコボコになりながらも最終的には倒すじゃないですか。その胆力というか、思いの強さで実力の差を逆転してしまった。そのブレない姿勢は好きですね〜。

編集部 正直、負けるんじゃないかとさえ思いました。



平山 たしかに。相対したとき、汗明は自らの武勇を語りながら、自身が中華最強であることを滔々と説明するじゃないですか。それを聞いて蒙武は「昨日まで相手に恵まれていただけだ」と言い放つ。カッコいいですよね! ただ、その男と男の戦いの中にも、父としての一面を垣間見せるところがまたいい。

編集部 ふたりの決闘に横槍を入れようとしてきた楚軍の媧偃(かえん)の攻撃から、蒙恬(もうてん)が父である蒙武を守ろうとするシーンですね。



平山 そこで、蒙恬が誤って二人の間に割って入ってしまい、汗明に重傷を負わされる。結果的に、その影響で蒙武は最後の爆発的な力を引き起こしたんでしょう。

編集部 信じられないほどのパワーで汗明を葬りましたからね。

平山 その後、重傷を負った蒙恬の配下から、父として最後の言葉をかけてあげてくれと頼まれるも、「この蒙武の倅(せがれ)だ。その程度で死にはせぬ」とひと言。しびれますよね。



編集部 蒙武と父・蒙驁(もうごう)とのストーリーも深いですよね。

平山 蒙武は子供ながらに、自分の父親がなかなか武将として認めてもらえず、国を転々としていたことに歯がゆさを感じていたはずです。ただ、父親を恥じたことは一度もないと思いますよ。

編集部 というと?

平山 「不器用だな」って思っていたかもしれませんが、自分が最強の武将になるにはどうすべきかを、父親から学んでいたところもあったと思います。



編集部 確かに。蒙武は無口な武将ですが、言葉の端々から父親へのリスペクトが感じ取れます。

平山 蒙恬も、そんなおじいちゃんのことが大好きですしね。だから蒙家って、みんなが全然違うキャラクターですけど、すごくバランスが取れていて、お互いがお互いをすごく見ながら成長しているんだろうなって思いますね。


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