残虐にして非道な男が見せた人間味
編集部 では、桓騎はどうでしょうか。どうも残忍な印象が強くて……。
平山 たしかにあまりにも非人道的な行動が強烈で、残忍なシーンばかりが思い出されますが、そんな中にも桓騎の隠れた人柄がうかがえるところもあります。例えば
函谷関の戦い。
編集部 籠城戦のはずが、相手の井闌車を利用し自ら馬で打って出て、韓軍の総大将、成恢(せいかい)を倒すシーンは痛快でした。
平山 あれはもう桓騎にしかできない戦術ですよね。個人的には、張唐(ちょうとう)とのやりとりにやられました。
編集部 秦国を長年支えてきた老将ですね。桓騎との相性は最悪でした。ただ、張唐は結果として、桓騎のおかげでリベンジのチャンスと死に場所を求めることができました。
平山 桓騎は張唐に「国を守る覚悟はあるのか?」と問われれば「あるわけねぇだろそんなもん。ボケてんのかてめぇは」と突き放したり、「もし窮地に陥ったら助けてやる、ただし頭をこすりつけて土下座するならな」だの散々言ってました。
編集部 年上を敬う姿勢も皆無ですからね、桓騎は。
平山 ただ、張唐が成恢を討ち取ったあと、瀕死の
張唐に肩を貸して「おっさんまだ死ぬな、約束の土下座が残ってんだろ」って言葉をかけますよね。
編集部 意外でしたね。
平山 張唐は桓騎のことを死ぬほど嫌っていましたけど、その斬新かつ鮮やかな戦い方に武将としての才覚を見出していましたよね。そして、
「秦国一の武将となれ、桓騎。秦を頼むぞ」と伝えて絶命し、桓騎は「………チッ。調子の狂うじじィだったぜ全く」と呟く。
編集部 印象的なシーンですね。
平山 そこで、「あれ? 桓騎?」って感じたんです。桓騎という武将は一体、どういう人なんだろうって。彼の痛みや怒りの根源ってなんなんだろうと考えさせられてしまうんです。今後の展開も気になりますね。
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