自分にないものを持っている男
編集部 ここまで王騎、蒙武ときました。最後のひとりは?
平山 迷いに迷いましたが、桓騎ですかね。最初のふたりとは対照的だし、どのキャラクターと比べてもずば抜けて異質。何考えているかわからないのですが、だからこそ無視できない。
編集部 その突き抜けた残虐性から、賛否両論のある武将でもあります。
平山 非道を極めた人ですけど、側近たちからは絶大な信頼を得ている。その理由はどこにあるんだろうって思いますね。
編集部 現状、桓騎の本質がまったく見えてきません。
平山 このミステリアスな感じが、どうしても読者としては魅力に感じてしまう。気になってしまうんですよ。僕自身、彼のような要素はまったく持ち合わせていません。自分が持ってないものを持っていることへの嫉妬みたいなものですね。
編集部 なるほど、嫉妬ですか。
平山 側近が拷問を受けてバラバラの死体になって帰ってきたときも、その亡骸をなんともいえない目で見つめるじゃないですか。怒りもしなければ、泣きもしない。ただ黙って顔の一部分に触れながら、「この…大馬鹿野郎が」と呟く。その姿に震えましたね。
編集部 まだ描かれてはいませんが、桓騎の本質がこれから徐々に明るみになっていくのでしょう。
平山 でもきっと、"いい人でした〜"みたいにはしないと思うなぁ。そんなふうにされたら「えっ⁉︎」て戸惑っちゃう。とはいえ、悲劇のヒーローみたいに描かれても、結局泣いちゃうと思いますけどね。
編集部 どういう感情ですか?
平山 結局、ズルいんですよ。あんな顔で「心配すんな、全部上手くいく」なんて言われたら、絶対について行くじゃないですか(笑)。やってることもズルいし、人としてもズルいし、キャラクターとしてもズルい。それでいて読者の我々がどっぷり引き込まれているわけですから……うん、ズルい(笑)。
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「頭脳で戦う武将、例えば現趙三大天の李牧や魏の名将、呉鳳明もカッコイイけど、結局、戦う背中を部下たちに見せていく武骨なスタイルの武将が好きなんですよね」と平山さん。
やはり、いつの時代も背中で語る男には惹かれてしまうものである。さて次回は、平山さんの心に残った名シーンについて。