貴重な当時のキャンパーの写真。文字盤に書かれたブランド名は……。
腕元が目立つ夏。ミリタリーウォッチ好きにオススメしたい、とっておきの一本がある。
今年フランスから日本初上陸を果たした、ケルトンである。
「え? タイメックスじゃないの?」と思った時計好きの貴兄にこそ、このケルトンの数奇な運命を知ってほしい。
日本初上陸した、知られざるフレンチブランド
フランス発祥の時計ブランド、ケルトンの出自は少し変わっている。
1955年、フランス空軍パイロットに向けて時計の製造していたヴィクサを率いていたステファン・ブーリエがアメリカ出張時に、タイメックスの幹部に声をかけたことをきっかけに立ち上げられたのだ。
ケルトンの創業者ステファン・ブーリエ(写真右)。
ケルトンというブランド名は、ステファン・ブーリエがタイメックスの創業地であるアメリカのコネチカット州ウォーターベリーを訪れた際に、現在ではアメリカの国家歴史登録財に指定される貴重な建物エルトン・ホテルにちなんで名付けられた。
第二次世界大戦後のフランスはアンチ・アメリカニズムの真っ只中にあったことからも、この新たなブランド名を得たことによって、タイメックスのヨーロッパ市場への参入は成功を収めた。
フランス時計心臓部といわれるブザンソンに1955年から3つの工房を構えたあと、さらに関連施設7つを含め、約3000人の従業員を擁するほど大きくなり、1972年には400万本を製造した記録が残されている。
レトロな雰囲気が漂う往年の広告用ポスター。
1987年には、1970年代に起きたクオーツショックの影響から操業を停止してしまうが、2016年にはフランスのアズ コンセイユ グループ社がオーナーとなって、ブランド再生。2021年には、ブランドロゴを一新させている。
これまでフランス国外での展開はなかったのだが、この度日本に初上陸する運びとなり、ブランド創設のきっかけとも言える幻のフランス版キャンパーが復刻されることになったのだ。
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