うつ病と認知症の症状は似ている
――若年性認知症を発症させないために、今からできることはありますか? 残念ながら、
認知症の決定的な予防法はまだ見つかっていません。しかし、アルツハイマー型認知症も脳血管性認知症も、糖尿病や脳血管障害といった、生活習慣から引き起こされる病気との関連が強いとされています。
――となると、やはり食事や運動が大事ですか? はい、適度に運動をして、血糖値や悪玉コレステロール値の低くなるような食事を心がけることが大切です。
特に睡眠と認知症の関連では、興味深いデータが最近見つかりました。脳内で生成されるたんぱく質「アミロイドβ」が溜まることがアルツハイマー型認知症のひとつの要因とされていたのですが、眠りが短かったり浅かったりする方が蓄積しやすいということが分かってきたのです。
つまり、十分な睡眠をとることが、認知症の予防策になるといえます。
1日6時間〜8時間を目安に寝るようにしましょう。
――むしろ10時間くらい寝てしまう過眠傾向にあるのですが……。何もしたくなくて、一日中眠り続けていたいって思うことも多々あります。 それはうつ病の症状を疑いましょう。
実は、若年性認知症とうつ病って間違われることが少なくないんです。というのも、うつ病は、認知機能や判断力、注意力、集中力が低下し、認知症と同じような症状を起こすことがあるからです。これを、
うつ病の仮性認知症といいます。
――若年性認知症とうつ病を見分けるコツはありますか? 大きな違いは、
うつ病は認知機能障害の自覚があるのに対して、認知症はその自覚がありません。
うつ病は分からないことがあると「分からない」と答えますが、認知症は分からないふりをしたり作り話をしたりします。また、うつ病の方は時計の絵を描写できるのですが、認知症の方はできない場合があります。
もの忘れが認知症とは限らない
――最近、もの忘れがひどくなってきました……これは若年性認知症と関係がありますか? もの忘れは自然な老化現象ですので、ある程度受け入れるといいますか、そんなに心配する必要はありません。
大事なのは、
もの忘れを自覚しているかどうかです。
――具体的には? 「最近、もの忘れがひどくなったな」と自分で思えている場合は、認知症ではありません。一方、もの忘れがひどくなったことを家族や親しい人に指摘されて、「え、それって何のこと? 思い当たらない」というようでしたら、それは認知症の可能性が。
また、「昨日のお昼に何を食べたか忘れた」というように一部分を思い出せないのがもの忘れなのに対して、「昨日の昼食を食べたこと」そのものを忘れるのは認知症です。
そのほか下記のサインがいくつか当てはまるようでしたら、認知症の疑いがあります。
・同じ話を何度も繰り返す。
・片付けしたことを忘れて、探しものをする。
・同じものばかり買ってきてしまう。
・今日が何月何日かわからない。
・朝と勘違いして真夜中に出かけようとする。
・好きだった料理の味に興味を示さなくなる。
・入浴、洗顔、着替えなどをしなくても気にならない。
――なるほど……やっぱり自分で判断するのは難しい気がします。 何か不安を感じたら、医師の診断を受けるようにしましょう。若年性認知症コールセンターなど、国による支援もありますので、アクセスしてみてください。
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認知症は、高齢者だけの症状ではなく、65歳未満でも発症しうる。
「最近、もの忘れがひどくない?」ともし家族や親しい人に指摘されたら、自分だけで悩まず病院できちんと診断を受けるようにしよう。