連載「
偏愛さんいらっしゃい!」とは……
▶︎すべての画像を見る ザ・ノース・フェイスをはじめ、アウトドアヴィンテージの収集家として世界的に知られる、「ジ・アパートメント(the Apartment)」代表の大橋高歩さん。
コレクションの幅は多岐にわたり、機能素材の王様・ゴアテックスを使用したアイテムのコレクションは、キャップやウェアだけで優に2000点を超える。
今回は、そんなゴアテックスにフォーカスして偏愛を語っていただいた。
話を聞いたのは……
ゴアテックスの偏愛さん「ジ・アパートメント」代表・大橋高歩さん
大橋高歩●1979年、東京都板橋区生まれ。中学時代にヒップホップの洗礼を受け、アメリカ東海岸のスタイルに傾倒。以後、USAメイドのヘビーデューティなアイテムのあれこれを収集し始める。2009年、吉祥寺にセレクトショップ「the Apartment」をオープン。彼のアーカイブ目当てに足を運ぶ、世界中のコレクターやファッション関係者は数知れず。
時代によって変わるゴアテックス。本当に魅力的なのは……
ヴィンテージのフラッシャーも保存している。こちらのゴアテックスのロゴデザインは、’80〜'90年代当時に流通していたもの。
“ゴアテックス”が防水性、透湿性に優れた機能素材ということは有名だろう。
とはいえ、その歴史やアイテムのバリエーションを把握して、「最も魅力的なゴアテックス」にこだわって収集している人は、ほぼいない。大橋さんは、まさにレアな存在だ。
なかでも大橋さんは、今では使われていない旧ロゴが付いたゴアテックスのアイテムがいちばん好きだという。
① ユニークな作りが魅力のゴアテックスハット
「年代でいうと'80年代後半から'90年代にかけて作られていたものですね。この時代には細部までかなり作り込まれたゴアテックスのアイテムが多いんですよ」。
そういって大橋さんが紹介してくれたのが、'90年代に登場したハンティング用のハットだ。
「迷彩柄のハットなのですが、ヴィヴィッドオレンジ色の裏地を見せて被ることができるようになっています。
オレンジは動物にとって目立ちにくい色のようで、狩りをするときの誤射防止になるんですよ。ゴアテックスのメンブレンが入っているので、触るとシャワシャワするのがわかります。こういったアイテムは手が込んでいて面白いなと思います」。
② 異素材ミックスのティンバーランド
ひと口に“ゴアテックス”と言っても、時代によってその形状やロゴなどのディテールは、常に変化しているという。
「当時のゴアテックスのアイテムは、しっかりハリが感じられるものが多い。中でもゴアテックスと異素材を組み合わせたアイテムが好きです」。
数あるコレクションの中でも素材使いがユニークで気に入っているのが、ティンバーランドの7アイレットのモカシンブーツだ。
ティンバーランドの名作、7アイレットのモカシンブーツは人気の高い定番。
「このブーツは、アッパーのフロント部分がレザーでサイドは高密度のキャンバス地になっていて、中にゴアテックス素材が張られているんですよ。『ここにゴアテックスを使っているの?』と思ってしまうような、いい意味で違和感があるアイテムには惹かれてしまいます」。
一般的にゴアテックスというとジャケットに目が行きがちだが、実は“靴”こそ本来のスペックの高さを感じられると大橋さんはいう。
「足は体の中で特にムレやすい部分。そのためゴアテックスの透湿性が効果を発揮しやすいと思います。
例えば登山で汗をかいて靴の中が濡れると体を冷やしてしまい、場合によっては命取りにもなる。そういうシーンでは、ゴアテックスの効果を強く実感できると思います」。
③ タフさを感じるゴアテックス製ジャケット
近年話題の軽量さやしなやかさを追求したゴアテックス パックライトなども確かに魅力はあるが、大橋さんの目に魅力的に映るのは、ゴアテックス本来の“タフさ”が感じられるもの。
このジャケットは、まさにそれを体現する一着だ。
胸にはUSPSの大きなワッペンが。同ジャケットは、ザ・ノース・フェイス製のものも存在する。
「これは郵便局員の制服として作られたゴアテックス製のジャケット。実はゴアテックスがユニフォームに使われることは結構多いんです。
このジャケットはプロパーという軍ものを多く手がけるブランドによるものですが、ザ・ノース・フェイスも警察や山林を保護する公的機関のユニフォームなどを作っています。ユニフォーム視点でゴアテックスに着目するのも面白いと思います」。
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