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40歳目前こそ、バイク始めの適齢期

浅見さんの仕事は東京都交響楽団のステージマネージャー。オーケストラの運営・演奏会などを取り仕切る舞台関係の裏方であり、現場監督でもある。

「大学のサークルでオーケストラをしていた関係で、プロのオケでアルバイトをする機会があったんです。その流れでそのまま、いいご縁があって。

音楽大学ではなく一般大学だったので、将来の道に演奏者という選択はありませんでした。クラシックはこのまま趣味でやっていくのかと思っていたところ、幸いにも音楽に関わる職業に巡り合えたのはラッキーでしたね」。



そう謙遜するが、ガレージをほぼ自作してしまうバイタリティと探求力、器用さを持つキャラクターなのだから、現場ではさぞ重宝されたのだろう。



「学生時代はほとんど運動らしい運動はしていなくって、高校通学のために自転車に乗り出したのが最初です。学校まで片道8km程度の距離でしたけどね。

思えばその頃から自分の手を動かして何かをいじるのが好きでした。スポーツ自転車の専門誌を購入して、自転車をパーツごとにバラしたり……。そんなことに夢中でした」。



そんな浅見さんとって、バイクは比較的、最近の趣味。乗り始めたのは40歳を目前にした約10年前だ。そのきっかけがまた興味深いというか、大いに参考になる。

「40歳って、肉体的なピーク・成長は止まっているかもしれませんが、一方でメンタルが大人になり、体もまだまだ十分に動きますよね。

もっと歳をとってから『本当はアレをやりたかったんだよな』と後悔したくなかったので、興味はあったけど手つかずだったバイクの免許を取りに行くことにしたんです」。



そもそも浅見さんにとってのバイクの原点は、幼少時にたまたま観たパリ・ダカール ラリーのTV放映にあるという。



「今でも脳裏に焼き付いているのが、空を飛ぶように駆け抜けていた、BMWのアドベンチャーバイク『R100GS』でした。

免許取得前からすでに別のアドベンチャーバイクを購入済みだったんですが、半年後くらいに偶然『R100GS』に出会ったのがバイクに傾倒するきっかけとなったのかもしれません。

カウルとタンク部分がラリーモデルのように換装されていたこともあって、一目惚れでしたね」。



さて、実際にバイクに乗り始めると、今度は同じ趣味嗜好の仲間と出会う機会が生まれるようになる。

「“先輩方”がそれはまた楽しそうに乗っているんですよ。皆さんご自身で本格的な修理やカスタムをしていた。それを見て、自分も元々持っていたカスタム欲が刺激されたんでしょうね。そこからさらに世界が広がっていきました」。

そうしてできた仲間のひとりから見せてもらった一枚の写真を通して “Tagmoto”なるメーカーと出会い、メールで問い合わせしてパーツを個人輸入したこともあったとか。スイングアームを伸ばして、空を飛んでいたパリダカ仕様のイメージに近づけるためである。



「イタリアのメーカーだったんですけど、日本人に売るのは初めてだって言っていました(笑)」。


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