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大きな力に育つ「ちょっとしたこと」

 

伝説の山男「ビッグフット」や国立公園に生息する動物などをモチーフにした、楽しい柄のソックス。売り上げのうち10ドルが国立公園財団に寄付される。各2970円/パークス プロジェクト(タイズサン 03-6421-1425)


清水さんのその快活な話しぶりについ失念してしまいそうになるが、国立公園の管理・運営には当然だが数多くの課題がある。

例えばそのひとつが、環境省が管轄するパークレンジャーに関する問題だ。パークレンジャーとは、国立公園を保護するためのパトロールや調査に携わる、国家公務員のこと。

動植物の保護、里山の保全、ビジターセンターの管理からトイレ整備など、その仕事は多岐にわたる。現在このパークレンジャーという仕事に就いているのは、日本全国で約300名。そう、人手が圧倒的に足りていないのである。

「彼らは日々、開発の認可審査といった事務作業に追われているのが実情。本来は自然の中に身を置き、公園を訪れる人たちのケアや環境教育にもっと時間を割くべきなのですが」。

パークレンジャーが本来の仕事に注力するために、事務作業を軽減する仕組みをつくれないものか。

そこで考えたのが、彼らをサポートする新しい組織。次世代により良い環境を残すために、国立公園内の課題を解決していく団体「ナショナルパークサービス」の発足を計画しているという。

「これもなかなか大変で」と話してくれる清水さんだが、その表情には確かな期待感が浮かんでいる。

子供や若者への自然教育。アイコンとなるアンバサダーを通じての啓蒙活動。日本のパークス プロジェクトも日々着実に進歩を遂げているのだ。

 

国立公園に興味を持ってもらうための子供向けグッズも販売する。左はアメリカの国立公園の風景を描いた塗り絵。右はFSC(森林管理協議会)認証の紙を使用したトランプである。塗り絵2750円、トランプ2200円/ともにパークス プロジェクト(タイズサン 03-6421-1425)


実に30年以上にわたり波に乗り続けてきた清水さん。自然の中で遊んできた人だからこそ、地球環境の変化に対する危機感は人一倍強いのではないだろうか。「このままでは間に合わない」と、本当はとても焦っているのではないだろうか?

「日々失われていくものに早く気付いてほしい、という思いはあります。ただこの4年間で実感したのは、何をするにも時間がかかるということ。

サステナブルに興味を持ってもらうことすら一朝一夕にはいきません。だから今は、ちょっとしたことを実行してもらえたらと思っています。

例えば、ペットボトルのキャップとラベルはきちんと外して捨てるとか。サステナブルの課題は子供の世代どころか、100年後、200年後までつながっていく話。

ちょっとしたことを続けていけば、将来はきっと大きな力に育つと思うんです」。

「パークス プロジェクト」
創業年:2015年7月
共同創設者:キース・エシェルマン、セバーグ・カザンツィ
本社所在地:LAマリーナ・デル・レイ
従業員数:30名(2022年4月時点)

Sustainable Keywords
・国立公園における動植物および歩道等の保全活動
・自然環境に対する若年層教育
・パークレンジャーなど人的リソースの改善と提案

(※1)トムス
米カリフォルニアにて2006年に創業。エスパドリーユを主力商品とし、世界中の人道支援団体をサポートしている。

鈴木泰之=写真 加瀬友重=編集・文

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