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ターコイズの市場規模は、これから伸びる可能性が高い

――逆に本場のアメリカには、コレクターはあまりいないのでしょうか?

「アメリカのコレクターは、ファッション好きというよりも、まだまだ’70Sに青春を過ごされた年配の方が多いですね。当時の映画スターに憧れて若かりし頃に購入したターコイズが、亡くなられた後に家族に発見されたというケースもよく聞きます」。

――それが今の市場価格で、高額になっていたり?

「所有者の死後に、ネットで家族が安く売りに出したものが、後に市場価格で300万円もするランダーブルーであることが判明したこともあったようです」。
 

中野さんも、2000年代以降にメディアから取材を受ける機会が急激に増えた。


――それは興味深いですね! まだまだ世界的に価値の共有がなされていないということですか?

「そうですね。例えば時計なら、ロレックスのこのモデルだと相場はこのぐらいという市場の基準があると思いますが、ターコイズの場合は、まだまだそこがしっかり固まっていないのが現状です」。

――市場として発展途上ということですね。

「はい。まだ、ちゃんとした価値を判断できる人も少ないですし。でも逆に言えば、これからシーンが成熟していけば、時計のようにリセールビジネスが盛り上がっていく可能性も大いにあります。それだけ伸び代が期待できる市場でもあるということです」。


「ターコイズ市場は、伸び代とロマンがある」と中野さん。


著名作家と状態の良い石、その掛け合わせが高い価値となる

――それはロマンがありますね。では、お持ちいただいたジュエリーをいくつか解説していただけますか?

「例えば、ラリー・ゴルシュという、もう引退してしまった作家がデザインしたこちらのネックレスは、1カラット、1万6000円〜2万ぐらいのものから、5万円前後の石が合計で14個付いています」。


ビズビーの石を贅沢に使った、ラリー・ゴルシュ作のネックレス


――石だけでも高額ですね。

「しかも作家のサインも入っていますので、安く見積もっても100万円台後半ぐらいの価格になると思います」。

――それはすごい! やはり重要な作家のものは、価値が高まるんですね。

「そうですね。こちらのネクタイピンは、ナバホ族の技法を1ランク押し上げたと言われるフレット・ペシュラカイのものです。“FP”というサインが入ると、バングルで150〜160万円はする著名作家で、常にコレクターの間でも高く評価されています」。
 

中央がフレット・ペシュラカイ作のネクタイピン。こちらは、裏面に“FP”のスタンプ入りのため、ないものよりも数万~数十万円は高く取引されるという。


――著名作家のデザインで、しかも上質な石が付けば価値はさらに上昇するということですか?

「はい。もう掛け算なんですよ。人気のある作家のもので、石が上質で綺麗、そして鉱脈の特徴をしっかり反映しているもの。それらが揃っているジュエリーは価値が跳ね上がります。特に大きくて、すごく綺麗な状態の石が付いていると、安定した価値が期待できますね」。


中野さんが首から提げているのは、ネバダブルーの石を使ったジュリアン・ロバートの傑作。


――大きさもポイントになるんですね。

「石が綺麗で硬くて大きいっていうのは、やはりポイントになります。今、小粒で50万円する石よりも、すごく綺麗で大きな30〜40万円の石を買っておいた方が、後々価値が上がる可能性がありますよ」。

ターコイズ市場が成熟すれば、価値が上がり続けるものも出てくる?

――なるほど。まずは、大きくて綺麗な石を手に入れる。それは重要な視点ですね。

「仮に今はそれほど市場で評価されていない鉱脈のストーンでも、状態が良くて大きければ、いずれ価値が上がる期待度がある。なので、自分の直感を大切にして、ターコイズ探しをしてみるのもありです。その方が、ロマンが広がって楽しいですし」。
 

“サンダーバードターコイズ”の石を使ったバングルが、最近の中野さんのお気に入り。今後、価値が上昇する可能性もある新しい鉱脈のひとつ。


――確かにそれは楽しいですね。株価のように、きっかけがあれば突然価値が上がることもあるわけですから。

「はい。ターコイズは、自分でその石の持つ妥当性や価値を見出して持っているのも楽しいですし、来るべき未来に評価されて、思いがけない財産になることもあるということです」。

――知識を高めて、しっかりした石を選べれば、さらに楽しくなりそうですね。

「現存する上質な石の数は限られていますから、市場が成熟していけば価値が上がり続ける、なんてことも十分にあります。そういうワクワク感も醍醐味なんですよ」。


「あのとき買っていれば……、という後悔だけはしたくない」と中野さん。


――それは凄い。ターコイズは、あらゆる可能性を秘めた、まさにロマンの塊ですね。

「そうですね。僕は、“インディアンジュエリーは、出逢ったときが最安値”という言葉を座右の銘にしています。出会ったときにグッときて、それが頑張って買える状況であれば、手に入れたほうが、後々絶対いいことがあると思っています」

見て着けて楽しいだけではなく、掘り当てられたターコイズには数々のストーリーが宿る。

さらに、真に上質なものであれば、市場価値が上がり続ける可能性もあると知れば、ますますその魅力に引き込まれる。

ターコイズの世界は、まさに男のロマンを駆り立てる “底なし沼”だった。

動画はコチラ!



佐藤ゆたか=写真 MediaStream, Inc.=動画 長谷川茂雄=編集・文

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