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2022.05.29

ファッション

古き佳き“アメリカの服”を作る「ディーエン」。ポートランドで築いたブレないスタイル



当記事は「SUiTE」の提供記事です。元記事はこちら
世代を超えて受け継がれるようなニットウェアを製造する「ディーエン」。ポートランドの魅力を伝えるシーズナルメディア『SUiTE』よりディーエンの1世紀にわたる尽力を紹介。

その作業場は、ポートランド北東部の奥地にひっそりと佇んでいる。室内では4人の職人が休みなく機械を動かして細い羊毛を分厚い生地へと編み上げていく。

古めかしい機械は、形状も複雑な構造もどこかアップライトピアノを思わせる。この機械で、ディーエンニッティングカンパニーは、100年近く前から事業の中核を担う厚地のニット生地を膨大に生み出してきた。

編み上がって縦長の作業台に広げられた生地は、さまざまな裏地(ムートンの毛皮やワックスを染み込ませた耐水性のキャンパス布やビロードのような革やサテンなど)と重ねて、型通りに切り取られる。

これで、ディーエン特有のセーターやジャケットが仕上がる準備は整った。切り取られた布地の山は、古いチア服やコートの掛かった二重ラックを通り過ぎて、熟練の女性裁縫師のもとへと運ばれる。彼女たちが布地に命を吹き込むのである。

 

ディーエンはウィリアム・ピーター・ディーエンさんが1920年に創業後、数世代にわたって家族経営を続けてきた。今では太平洋岸北西部に残る数少ないニット製造会社だ。

1920年代に大学生向けセーターなどを携えて、厚手の衣料品市場に参入した。その後、1930年代には地域のオートバイクラブにツーリング用セーターを、1950年代には高校生や大学生向けのカスタマイズスタジャンを販売し始める。

丈夫で高品質な洋服というディーエンの評判は、当時も今も変わらない。オレゴン州ポートランドのこの作業場では、今でもデザインから編み上げ、切り取り、縫製のすべてが手作業で行われている。



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