「
オキニのメンテナンス塾」とは……
ブーツを履こうとしたら、アッパーに白い斑点を発見。
「ゲッ! カビが生えてるじゃん」。
皆さんにもこんな経験はないだろうか。そのまま履き続けるわけにもいかないし、どうケアすればいいのかもわからない。
谷澤有紀さん●革靴からスニーカーまで、シューズの修理やクリーニングを専門に行う「シュー オブ ライフ」の店長。1985年生まれの37歳。「使い捨てではなく、修理して大事に履く人が増えてほしい」と、ヴィンテージの革靴を取り扱う古着店から、“直す職人”へと転身したナイスガイ。
そこで
ニューバランスに引き続き、「シュー オブ ライフ」の店長、谷澤有紀さんにメンテナンス方法を聞いた。
まずはカビが生えたブーツを問診
原が4年前にブランドストーンで購入したスエード素材のサイドゴアブーツ。雨の日に履いたあとは必ず天日干ししていたが、3年目くらいからアッパーに白いカビが生えるようになってしまった。
今回、持ち込んだのはWeb編集長・原 亮太の私物、ブランドストーンのスエードブーツ。
防水性を誇るため雨の日用のレインシューズとしてガシガシ履いていたが、いつの間にかスエードにカビが生えてしまった。よく見るとソールまわりには泥跳ねのような汚れも目立つ。
要は相応にくたびれている。
「ひとつだけ最初にお伝えしておくと、カビは専門店でクリーニングして滅菌しない限り、完全に取ることはできません。
ただ、最低限のエチケットとして“表面のカビを取る”ことはできます。あくまで応急処置なので、ブーツを履かない時期になったら一度クリーニングに出してくださいね。では、ソールから始めてきましょう」。
今回使ったケアアイテムの一部。栄養・防水スプレーとステインリムーバーだ。
【使う道具はこちら】
・ステインリムーバー(水性の靴用汚れ落とし)
・スエード用の栄養・防水スプレー
・除菌用のアルコール
・タオル
・紙やすり
・シューズ用ブラシ
どれも簡単に入手できるものばかり。除菌用のアルコールは手指の消毒用でOKだ。
ステインリムーバーやスエード用の栄養・防水スプレーはドラッグストアには置いていない場合が多いので、Amazonなどで購入しよう。
まず谷澤さんが使ったのは、ステインリムーバーという靴用汚れ落とし。コレを乾いたタオルに適量たらして、ソールまわりをゴシゴシ拭いていく。
「汚れの度合いによっては水、あるいは除菌用のアルコール液で拭いても構いませんが、今回は土汚れが目立つので、専用のクリーナーを使います。水性の靴用汚れ落としであれば、どのメーカーのものでも問題ありません」。
汚れが溜まりやすいミゾ部分やロゴまわりは爪を立てて重点的に、ソール全体をひととおり拭いていく。一旦乾いてから、もし汚れが残っているようであれば、すべて落ちるまで繰り返そう。
次はアッパーのケア。スエード用の栄養・防水スプレーを全体に吹きかけてから、ブラッシングしていく。
「スエードは起毛しているのでホコリがつきやすい。なので見た目をキレイにするならブラシを使うのが有効です。
毛を叩いて起こすようなイメージで、シャッシャッシャッとブラッシングしていきましょう」。
シューズ用のブラシであればどんなものでもOKだが、毛が硬いものの方が毛を起こしやすいとのこと。
あれ? 気になるカビの処理はコレだけで大丈夫なの?
「靴の表面に見えるカビ汚れは、生地に粘着しているというより、ホコリのように起毛部分に乗っているものなので、それを取り除くのだけならばブラッシングで十分です。
ただし、カビがなくなったように思えても、菌は奥で生きていることをお忘れなく。やはり滅菌をする必要はあるでしょう」。
ブラッシングで全体の色味を整えたら、アッパーの色落ちした部分を紙やすりを使って整えていく。
やりすぎると毛がなくなってしまうので、小さくカットした紙やすりで優しく撫でるよう整えるのがポイントだ。
ブラッシングでスエードの毛が立ち上がり、かなり元気を取り戻したように見える。紙やすりのおかげで細かい擦れも目立たなくなっている。
ブーツのインソールにはホコリや土汚れなどが蓄積。見落としがちだがブーツの中は重要だ。
ここまで外見をキレイにしたら、最後に忘れてはいけないのがブーツの中のケアだ。
「中敷きが外せるタイプのものなら、取り出してゴミを落としつつ、除菌用のアルコールで拭いてあげましょう。コレだけでかなりさっぱりしますし、ブーツの臭い対策にもなります」。
中敷きを取り出したブーツの中にも手を入れて、つま先までアルコールでゴシゴシゴシゴシ……。
よく見かける除菌用アルコール液でOK。
これを定期的に行うことでカビの予防にもなるという。
スプレーする際はシミにならないよう、30cmほど離して行うことがポイント。
最後にもう一度、栄養・防水スプレーをブーツ全体に吹きかけたら完了!
スエードの質感が蘇り、清潔感あふれるブーツになったのがわかるだろう。あんなに主張していたカビも、見た目には姿を消している。
「専門店だと、さらに仕上げとして補色用のコバインクを塗ったりしますが、ご自宅できる範囲と考えるとこれで十分だと思います」。
谷澤さんがいうようにブーツにカビが生えてしまったら、一度クリーニングに出すのが得策だ。それから今回教えていただいた方法でこまめにケアすれば、カビ予防にもなるという。
「ブーツは形状もあって、湿気が溜まりやすいんですよね。それもカビの一因だと思います。ですから履いたあとは、とにかく通気性のある場所に置いておくのが大事。
下駄箱にしまうなら週に1回は扉を開放するだけでも変わってきますし、オープンラックに置いておけばなお良しです。市販の乾燥剤なども使ってあげるといいと思います」。
さらに谷澤さんおすすめのブーツ保管術も教えていただいた。
「ダンボール製のシューズボックスにしまう人が多いと思いますが、これは湿気が溜まりやすいので注意してください。
それよりも生活雑貨店などで売っている不織布の袋に入れておいた方が、通気性がよく、ホコリもかからないのでいいと思います。
それからシューキーパーを入れるのもお忘れなく。脱いだままの形で放置しておくと、皮が温かいまま固まってしまい、ひび割れの原因になります。
シューキーパーで履きジワをしっかり伸ばして保管する習慣をつけると、大切なブーツを長く履き続けることができると思いますよ」。
“味”と“汚れ”はしっかり区別して、常に小綺麗な足元をキープすべく、こまめなケアを習慣づけたい。
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