国内初のグレーの杢糸「GR7」を開発した紡績糸メーカー、新内外綿。そのオリジナルブランドが「モクティ」である。こちらは定番よりも厚手の生地で編み上げた新作シリーズ。着込むほどにカラダに馴染み、抜群に着心地がいい。パーカ2万5300円、スウェット1万5400円、パンツ1万9800円/すべてモクティ(ユナイト ナイン 03-5464-9976)
スーツともセーターとも違う、スウェットのあのグレーは独特だ。1887年創業の大阪の紡績糸メーカー、新内外綿の長谷川進さんがその作り方を教えてくれた。
「グレー杢は自然な状態のコットンボールの白綿と黒に染めた黒綿を杢調に見えるように配分して作るんです」。
綿をグレーに染めるわけではなく、白と黒の割合によって“グレー杢に見える綿”を作るというわけ。そして実は新内外綿は、世にあるグレー杢のスウェットの基準色となる糸を作っているメーカーでもあるのだ。
「『GR7』という名前の糸です。1970年代に国内初の杢糸として開発されて以来、世界中のアパレルメーカーがこの糸で作ったスウェット生地を使っています」。
気になる配合は白綿が80数%、残りが黒綿である(細かい数値は秘密)。ではなぜこの配合の、この色みでなければならないのか?
「スポーツのときに着るスウェットは本来必ず汚れてしまう服。でもグレー杢なら汚れが目立ちにくい。それに肌触りの良い色でもありますからね」。
色が肌触りに関係あるとは……その理屈はこうだ。染色とは繊維に染料を吸着させること。どんなに技術が進んでも染色すればコットンの柔らかさを損なうことになる。
つまり黒(ほかの色も然り)では繊維が固くなる。だが、無染色の白ではすぐ汚れてしまう。だから白と黒を絶妙に配合したグレー杢は、汚れが目立たず着心地も抜群の、スウェットのための究極の糸なのだ。
とはいえ「なぜスウェットはグレーなのか」という疑問はいまだ残る。インターネット上には諸説溢れているが、長谷川さんいわく「アメリカあるいはヨーロッパにルーツがあると思うが、本当のところはわからない」と言う。
最初にスウェットを作った人間が「運動着にはグレーが向く」と考えたのでは……そんなふうに推測するのみである。
しかしながら「スウェット=グレー」のイメージが世界共通となったのは、この「GR7」という杢糸の存在によるものであることは間違いない。
アスレチックウェアからアイビー御用達アイテムを経て、’80 年代に全世界に広まったスウェット。それと同時に「GR7」は全世界のアパレルで採用され、以後40年にわたり「スウェットのグレー」を表現し続けてきたから。
そう、カジュアル服としてのスウェットの歴史は、このグレーの杢糸の歴史なのである。