結婚生活に派手さはいらない?
──作品は、昨年のショートストーリーの続編。未来からの手紙の中で「2100年の結婚式後の結婚生活から生まれた一人言」が紹介されています。 再び2200年を生きる「子孫からの手紙」が題材に。2100年に結婚式を挙げた“曾祖父母”のその後が描かれている。全編は「バーチャルツアー」で視聴可能
菊地:「一人言」は、本当に共感できる言葉ばかりでした。どこから着想を?
又吉:たまたま執筆期間に芸人の後輩に会う機会があって、その後輩は既婚者だったので、「結婚してよかったのってどんなとき」って聞いてみたんです。そしたら、「嫌なことがあっても、“家に帰ったら仲間がいる”って思えるのがいいんですよね」って言われて。
それを聞くまでは、「いかに文章で見せるか」、つまり「ハッとするような言い回しを織り交ぜた作品をつくりたい」と思っていたんですけど、この後輩の言葉を聞いて「素朴なことも大事やな」と思い、書き直しました。好きな人と一緒に日常を過ごしていくなかで、「あったら素敵やな」と思う瞬間を集めた感じです。
結婚生活って、たとえそれが周りからみたら「平凡」なものだったとしても、当事者の二人にとっては“特別な瞬間”みたいなものがあるんだなと思ったんです。だから、そんな派手さはいらんのかなって。
菊地:なるほど、とても共感します。
導入部分はくすくす笑いながら読んでいたけれど、読み終わったときには涙がでていて、不思議な作品でした。
永遠に続かない結婚もある
又吉:このプロジェクトは、他のクリエイターの方と同じテーマで作品をつくるので、その点でも面白かったです。
中には「結婚が永遠に続くか続かないかよりも、永遠を誓い合ったその瞬間が大事」という文章もあって、これもひとつの見方だなと思いました。
僕は今回「永遠に続く結婚」を描いたけれど、僕の作品を補完してくださるような作品もあるのが、共作の面白さですよね。
そうやって他のクリエイターさんの作品を拝見したりするうちに、盛大に開く結婚式はかっこいいし、文化として続いていってほしいとは思うけれど、それぞれのカップルに合った形があっていいのでは、と思うようになりました。
菊地:まさに今回の企画展では、「もっと自由に考えていいんだ」と、多くの方に思ってもらえたら良いなと思っています。
「結婚や結婚式ってなんなの?」と考えることは、人間の営みについて考えることにもつながります。そういう意味では、「結婚」に関係のある方にもない方にも、ぜひ考えていただきたいテーマです。
このプロジェクトは今後も続けていく予定なので、ブライダル業界全体をエンパワーできる存在になりたいですね。