アウフヘーベン!
では、どうすればよいか。若い部下の矛盾を嘆いても、それが現実なのですから仕方ありません。経験豊富な上司側が歩みよるしかありません。
部下の「任されたくない」&「管理されたくない」という矛盾する思いをアウフヘーベン(Aufheben:ドイツ語の哲学の術語)する。つまり、一見対立する考え方からより高い次元のアイデアを導き出すのです。
ビジネス書の古典『ビジョナリーカンパニー』でも「さまざまな側面の両極にあるものを同時に追求する能力」「AかBかのどちらかを選ぶのではなく、AとBの両方を手に入れる方法を見つける」ことを「ANDの才能」と呼んで、ビジョナリーカンパニー(永続的に卓越した成果を上げる企業)の文化の特徴として奨励しています。
難しいことを成し遂げるから稀少価値が出る
なぜ、矛盾に立ち向かうと卓越した存在になれるのか。
それは、安易に「OR抑圧」(こちらも「ビジョナリーカンパニー」の言葉)、つまり「矛盾することは同時に追及できない」と理性的に諦めないこと。「ANDの才能」を発揮して一見矛盾するようなことを両立させれば、それが難しいことだからこそ稀少価値が出るのです。
これは部下のマネジメントにおいても同じではないでしょうか。「放任しても自走できる部下」や「素直に言うことを聞く部下」ならマネジメントできて当然。しかし、「任されるのも管理されるのも嫌な部下」をマネジメントできてこそ稀有な上司になれるのです。
簡単に解けない問題を解くことが上司の仕事
そもそも理性的に考えれば解決できる簡単な問題は、最前線の優秀な社員がちょちょいとやってしまい、上司まで上がってくることはありません。
「矛盾したことを両立させる」といったような難題についてだけ、部下は「どうしたらいいでしょうか」と上司を頼るのです。
組織の上層部になればなるほど、複雑で矛盾だらけで情報も不足しているような難しい問題になっていきます。ですから、上司たるもの、そういう問題に対峙したときに嘆くのではなく「ここが腕の見せ所」と思ってみてはどうでしょうか。
「任されたくない」けど「管理されたくない」だとぅ、上等じゃないか!と。
経営の神様の答え
さて、結論です。日本を代表する名経営者であるパナソニック創業者の松下幸之助氏が既に何十年も前に答えを出してくれていました。
それは「
任せて任せず」です。松下氏は「任せてはいるけれども、絶えず頭の中で気になっている。そこでときに報告を求め、問題がある場合には、適切な助言や指示をしていく。それが経営者のあるべき姿」と言っています。
私は付け加えることはありませんが、要はシンプルな「どっちがよいか」という答えはなく、「ケース・バイ・ケースで、自分で考えろ!」と松下氏が世の中の上司たちに言っているように聞こえてなりません。
「モヤモヤ り〜だぁ〜ず」とは……
組織と人事の専門家である“そわっち”が、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「20代から好かれる上司・嫌われる上司」の続編である。
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