「モヤモヤ り〜だぁ〜ず」とは……
本日の相談者:42歳、印刷業
管理職になってからリスクをとる決断ができなくなりました。若いときは難しいチャレンジに燃えていたのに、今はメンバーを路頭に迷わせたくないと思いが強くなっています。
| アドバイスしてくれるのは…… そわっち(曽和利光さん) 1971年生まれ。人材研究所代表取締役社長。リクルート、ライフネット生命保険、オープンハウスにて人事・採用部門の責任者を務めてきた、その道のプロフェッショナル。著書に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか?』(共著・星海社新書)ほか。 |
判断の難易度は出世するにつれ上がっていく
会社という組織においては、上位職位になればなるほど、仕事で判断すべきものが難しく、かつ会社への影響の大きいものになります。
それは、最前線の社員が自分では判断できないものを、上司にお伺いし、判断を仰ぐ仕組みだからです。判断が簡単なものであれば、上進するまでもなく、自分でやってしまいます。
大きなリスクを伴う判断であったり、どちらを選ぶべきか微妙なチョイスバランスであったり、複雑でそもそもどう考えたらよいか理解しにくいものであったり、情報が足りなすぎて何とも言えないものであったり……。
背景はさまざまですが、管理職にはそういう難しい判断が求められるわけです。
決断ができなくなったのか、難しくてわからないのか
ですから相談者の悩みはよく理解できるのですが、問題は、決断ができなくなったのか、それとも決断力は特に変わらないけれど、難しい案件だから分からないので決断できないのか、です。
私の経験からは、たいていこういう場合は後者ではないかと思います。「メンバーを路頭に迷わせたくない」という気持ちは立派ですが、中間管理職の一決定でメンバーが路頭に迷うようなことはなかなかありませんし、あるとしてもその責任は経営者です。
管理職が社員の雇用責任を負う必要はありません。難しくてなかなか判断できないということを認めたくないがゆえに、「メンバーのために決断できない」と言っているのではないか、と私は思うのです。
徹底的に考え抜けば、決断など必要がない
もっと言えば、簡単に決断という言葉を使ってしまっていますが、目の前の問題がきちんと整理されて、選択肢がすべて吟味し尽くされているような状態であれば、本来決断などということは不要なはずです。
「これこれこういう理由で、この道を進もう。以上」でおしまいです。「えいや!」と清水の舞台から飛び降りるような決断が必要ということは、考え尽くしていないからかもしれません。
経営者の視点からすれば、考え尽くしてもいない状況で、博打を打たれてはたまったものではありません。
もうちょっと考えれば、もうちょっと調べれば、わかるかもしれないことを途中で放り投げて決断してほしいとは思わないでしょう。
2/2