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安藤 それでも一定期間作り続けたのが偉いです。自動巻きムーブメントの目新しさはそのうち薄れてしまったはずですが、’70年代の到来を感じさせる独特なデザインや、映画で印象的に使われたという事実が、じわじわと利いてくる。本来なら万人受けするはずのないルックスだと思うんですが、気が付いたら誰もが憧れる存在になっていた。最近だと四角いクロノグラフもなくはないけど、ある意味モナコはそれらとは別物。唯一無二の存在感がある。

広田 今のモナコは昔のに比べて作りがかなり良くなりましたから、その辺りも万人受けする理由かもしれません。先ほど、初期のモナコのケースはお弁当箱みたいだと言いましたが、そこで防水性を高めるために使っている糊のようなものが、だんだん劣化してきたものもあったようですが、近年のモデルならケースの構造も違うからそういう問題もない。



安藤 モナコって、かつて手巻きのモデルもありましたよね?

広田 そうそう。自動巻きクロノグラフを載せたスゴいやつっていう、本来の世界観から完全に逸脱したのがありました(笑)。

安藤 でも、そういうある意味での“ユルさ”があるのも、ホイヤーのいいところだと僕は思います。ロレックスとかだと、まずそういうことなさそうじゃないですか。

安藤夏樹さんは1975年、愛知県生まれ 安藤夏樹(写真右)●1975年、愛知県生まれ。ラグジュアリーマガジンの編集長を経て、現在はフリーに。「SIHH」や「バーゼルワールド」を毎年取材し、常に自分の買うべき時計を探す。口癖は「散財王に俺はなる!」。


広田 確かに、そういうところも含めて、ホイヤーは楽しい。

安藤 楽しいといえば、昨年のバンフォードとの取り組みは正直かなりワクワクしました。

広田 本来なら組むはずのない、改造ブランドのタッグですもんね。

安藤 時計の世界って、かつてはもっと自由だったですよね。時計雑誌なんかも、防水テストと表して釣り竿で時計をつけた糸を船から垂らしたりして。なんか、そんな自由さをあのモデルに感じたんです。時計はもっと楽しく、自由にあってほしいものだなと。だからあれ、本気で欲しかったんだよなー。でも瞬殺で売り切れちゃった。広田さんの絶大なる政治力で、1本何とかなりませんかね(笑)。

広田 はい、まったくなりません。そんなことしようものなら失脚します(笑)。

 

※本文中における素材の略称:SS=ステンレススチール

関 竜太=写真 いなもあきこ=文

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