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オイルを制するものがブーツケアを制す!? 正しいオイルの使い方
連載「愛する靴の愛し方」
お気に入りを履き潰しては買い替えて……なんてもったいない! 愛する一足を守る術をフットウェア・ラバーたちに教えてもらった。
革製品のメンテナンスといえば、ミンクオイルを使ったケア方法をよく耳にする。しかしその一方で、ミンクオイルは良くないという否定的な声もちらほら。一体どちらが正解なのだろう……?
靴の世界に飛び込み17年、修理と製造の双方をこなす「BRASS(ブラス)」代表の松浦 稔さんに教えてもらった。
オイルの「塗りすぎ」が、ケア失敗の原因に
「私がはじめて自分の革靴を手にしたのは、約25年前。高校生のころにレッドウィングを譲ってもらったのが最初でした。当時はシューケアグッズが充実しておらず、オイルはミンクオイル一択。僕も使っていました」。
やはりミンクオイルは、長きに渡り使われてきた定番のメンテナンスアイテム。その事実は変わらないようだ。しかし、なぜ悪いイメージが?
「靴修理の仕事をするようになり、よく依頼を受けるのが、水分不足による表面のひび割れ。持ち主にケアの方法について伺うと、ほとんどの方がミンクオイルをはじめとする、オイルをメインに使ったケアでした。長い間オイルのみのメンテナンス、つまり油分のみを入れ続けた結果、水分が足りなくなり表面が割れていたんです」。
水分不足によるひび割れはミンクオイルに関係なく革靴のメンテナンスにおける失敗の代表的な例だが、多くの人がその失敗を経験したことから、結果として“ミンクオイルは悪”というイメージがついてしまったのではないかという。
「オイルによるメンテナンスの失敗例としてミンクオイルばかりがやり玉に挙げられがちですが、ほかにも羊毛からとったラノリンオイルや鮫の肝油から抽出したスクワランオイルなど、どの種類のオイルおいてもひび割れはありえることです。正しい使い方を知っていれば、オイルはとても優秀なケアアイテムなんですよ」。
ブーツケアの基本は、水分と油分のバランスを保つこと。どちらも塗りすぎはNGだ。ここからはオイルの正しい使い方について紹介していこう。
「オイルを使うメリットは、革を柔らかく馴染みをよくしてくれること。新品の革靴などを履いた際にありがちな、固い革で足に痛みを感じる場合や、経年劣化によって革が乾いて固くなったときには、オイルの出番。とくに後者は、着用時にかかる足の圧が原因でひび割れる場合があるので、内側からオイルを馴染ませるのもテクニックのひとつです」。
塗り方のポイントは指で直接塗ること。オイルを体温で溶かしながら、薄く全体に伸ばすようにするのが正解。塗布後は余分な油分を取り除くため、ブラッシングをしよう。部分的に塗ると、その部分だけ色や質感が変わることがあるので、ご注意を。また、クリームやワックスがついていない“すっぴん”のときに塗ると、素早く浸透するそう。
ブーツのオイルケアは、半年に1度で十分
オイルには液体や固体など、さまざまな種類が存在。ベストなオイル選びのポイントについて、松浦さんいわく「体温で溶けるような融点の低いオイルが、誰もが使いやすく、トラブルになりづらいという点で、ベストだと考えています」とのこと。
また、「オイルケアの頻度は半年に1度でOK。オイルはブーツの魅力である艶やシワ、色の抜けなどの変化をマットな風合いに整える性質があります。経年劣化を楽しみたいという場合は、オイルではなく、クリームをオススメします」。
ブーツの表情を決める、オイルケア事情。愛靴のケアが楽しくて、ついついやりすぎてしまう人、何事もやりすぎはNGだ。正しいオイルの使い方・選び方を、日頃のケアに取り入れていこう。
[お話を聞いた人]松浦 稔1977年生まれ。電気系のエンジニアを経て、靴修理の世界に足を踏み入れた異例の経歴を持つ。5年間の修行後、2007年に靴修理・カスタム店「ブラス」をオープン。2012年に発表したオリジナルブランド「CLINCH(クリンチ)」のプロデュースも手がけている。
ブラス住所:東京都世田谷区代田5-8-12
電話番号:03-6413-1290
営業時間:12:00〜20:00
定休日:水・木
www.brass-tokyo.co.jp 小島マサヒロ=撮影 長浜優奈(EditReal)=取材・文