ネットの発達で旅行業界へ転機が訪れた

相模原は真鍋さんの故郷。高校時代、日本はまだバブル景気の真っ只中にあり、世の中には浮かれた空気が横溢していた。そこで、旅行学科のある専門学校に進み、卒業後は上京して旅行代理店の添乗員になろうと考えた。

「当時、よくドラマ『男女7人夏物語』を見ていたんです。明石家さんまさん演じる今井良介は、旅行代理店のツアーコンダクターという設定でした。バブリーな時代だったから、ツアコンは人気の職業でした」。

若者の未来は明るく、将来を悲観する雰囲気は微塵もない。真鍋さんは収入アップを求めていくつもの旅行会社を転々とする20代を送る。

「収入が上がるなら非正規雇用でも気にしなかったですね。でも、バブルが弾けて旅行業界の景気もどんどん悪くなった。そこで旅行業務取扱管理者の国家資格を取ったんです」。

旅行業務取扱管理者になると、条件面で優遇されるだけじゃなく、独立も可能となる。自宅を事務所代わりにして独立し、ニッチな国へのツアーを打ち出してさらに収入をアップさせた。

「クロアチアのような、ガイドブックにも出ていないような国に絞ったんです。自分で現地のツアー会社と交渉したりしましたね。この戦略は当たりました」。

しかしネットの発達によって個人が航空券やホテルを手配することが容易な時代になっていく。さらにその頃、真鍋さんを予期せぬ出来事が襲う。それが母の認知症と東日本大震災だ。