「大人のCOMIC TRIP」を最初から読む いよいよレジャーシーズンが到来。今年の夏は家族でキャンプに行こう、なんて計画をしている人も多いはず。アウトドアは、男の見せ所。妻や子供に頼りになる背中を見せるのにもってこいだ。
そこで読んでおきたいのが、『山賊ダイアリーSS』(岡本健太郎/講談社)。山での狩猟体験をリアルに描いた実録マンガ『山賊ダイアリー リアル猟師奮闘記』の続編である。
セカンドシーズンとして描かれている本作では、前作の舞台だった「山」を飛び出し、「海」でのアウトドア体験がテーマになっている。作者本人が投影されている主人公・岡本が猟銃の代わりに手にしたのは「モリ」。それと知識だけを武器とし、岡本は気ままな車中泊の旅に出る。
食べ物は、その日獲った魚介類のみ。シュノーケルを身につけ海に潜り、自由気ままに泳ぐ魚にモリを突く。獲れたものはその場で調理。最低限の器具しかないものの、彼の食卓に並ぶのはどんなレストランにも見劣りしないご馳走だ。
とはいえ、さすがに家族イベントでモリを突くのは、いささか難易度が高いもの。では、本作が参考にならないのかというと、そうではない。たとえば、本作に収録されている「海辺に泊まろう」シリーズには、海でのキャンプ時に役立ちそうな知識が満載。パーカを使い「簡易ハンモック」を作る方法や、海水を蒸留させる方法など、子供と一緒に試してみれば喜ぶに違いないアウトドア術が豊富に紹介されている。
もちろん、これらの知識は緊急時にも役に立つ。万全を期していても、野外での宿泊にはどんなトラブルが待ち受けているかわからない。万が一の際、本作から仕入れたアウトドア術があれば、家族を守ることにもつながるだろう。
大自然の脅威。「命をいただく」ことの意味。作者・岡本氏の体験をもとにした本作には、人間が自然の中で生きていくとはどういうことなのか、が等身大で描かれている。そして、それは我々大人が忘れかけている、否、そもそも知らないことだらけだろう。
レジャー気分で自然の中に身を投じる前に、まずは「サバイバルの教科書」として本作を読んでおくのも手かもしれない。
五十嵐 大=文
’83年生まれの編集者・ライター。エンタメ系媒体でインタビューを中心に活動。『このマンガがすごい!2018』では選者も担当。