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2022.01.31

ライフ

「経営幹部の考えが古い」と感じる場合、中間管理職・42歳はどう対峙すべき?

「モヤモヤ り〜だぁ〜ず」とは……


本日の相談者:42歳、メーカー営業職
メーカーで営業職をしています。課長になって間もないのですが、経営幹部である本部長の指示が、私には時代にそぐわない過去の栄光の押し付けに感じてしまいます。

部下にはできるだけ私なりの解釈で指示を伝えているのですが、中間管理職としてどう対峙するのがいいか、モヤモヤしています。経営幹部に答申すべきとも思いますが、目をつけられてしまうのも怖くて……。


アドバイスしてくれるのは……

そわっち(曽和利光さん)

1971年生まれ。人材研究所代表取締役社長。リクルート、ライフネット生命保険、オープンハウスにて人事・採用部門の責任者を務めてきた、その道のプロフェッショナル。著書に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか?』(共著・星海社新書)ほか。

過去の経験から考えるから成果が出せる

人は経験を積むことで、一から物事を順序立てて考えなくてもよくなります。「大体こういう場合はこうだったから、今回もこうだろう」と勘で判断することができるようになります。

このような経験則による思考を「ヒューリスティック」と言います。この思考ができるようになることで、判断がスピーディになり、効率的に成果が出せるようになるわけです。
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一から物事を論理立てて考えていく(このような思考方法を「アルゴリズム」と言います)より、たくさんのことを一度に処理できるようになるため、マルチタスクが求められる経営者や管理職には、ヒューリスティックは必須の思考方法と言えるでしょう。

経験則はベストでなくても一定の成果は望める




ですから、経営幹部のような人は、まずはその経験から物事を考えることが基本になります。

相談者のように本部長を「過去の栄光の押し付け」をしていると感じるのも無理はありません。そして、実際、何度も試してうまくいったことは、再び成功する確率は高く、本部長が指示する方法が古く時代にそぐわないベストな策ではないと見えても、一定の成果は望めるでしょう。

一方で、いかに時代に合ったように見える新しい方法であっても、すぐに成果が出るかどうかは不明です。場合によっては、まったくのゼロ成果ということさえありえます。古い新しいではなく、確実に成果を出す方法を取るというのはひとつの理知的な判断です。
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ただし、ハイリターンを得ることはない

だからと言って、私は本部長の「過去の栄光」に闇雲に従えというつもりはありません。

ヒューリスティックはスピードも速く、一定の成果を上げる確率は高いので、ローリスクです。しかし、環境の変化によって徐々に通用しなくなり成果が漸減することも多く、結果ローリターンしか望めないことが多いからです。

ハイリスクでもハイリターンを得る可能性のある“新しい方法”を試さなければ、待っているのは“緩慢な死”です。

企業は一時の栄華だけではなく、存続していくことが重要であり、そのためにはいくらハイリスクであったとしても、新しい方法を試行錯誤して、新たな成功パターンを生み出さねばならないのです。
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 「経験」対「経験」では、幹部を説得することはできない




そのため、新しい案を持っているのであれば、是非本部長に対して提案を行って、“試行錯誤”の承認を得てほしいです。

しかし、単に「こういう策の方がいいような気がする」という緩い提案では承認を得るのは無理でしょう。経営幹部も「経験からの勘」、提案する側も「経験からの勘」で戦うなら、経験の少ない方の負けは明白です。

残念ながら、新しい案を思いついても、それを「勘」以外で説明できる人は多くはありません。それで結局、経験豊富な幹部の「勘」に勝てず、納得がいっていないのに「過去のやり方」に従うことになります。

そうなると、せっかくの新しいアイデアも、承認を得ないでも大丈夫な範囲で「無許可」で隠れてやるしかないわけです。

ヒューリスティックにはアルゴリズムで勝つ



ただ、そんな中途半端なことでは、せっかくの新しいアイデアがもし新しい成功パターンであったとしても、その効力を十分に発揮することはできないでしょう。

「経験」に勝つには、「論理」つまりアルゴリズムしかないのです。

言い換えると、思いついたアイデアを、「ファクト(事実)」からスタートして「ロジック(論理)」を用いて可能性を証明しなければならないということです。

もちろん新しいアイデアなのですから、すべてのファクトが出揃うことはないかもしれませんが、可能な限りのファクトを集めて、新しいアイデアが成功しそうであるということを立証する必要があるのです。

 それでもダメなら覚悟を示すしかない

そんなこともせず、単に「新しいアイデアを実行に移さない幹部はダメだ」と思っているのは、それこそ怠惰、責任逃れです。

悪いのは幹部ではなく、アイデアの可能性を説明できない側にあります。ビジネスは真剣勝負ですから、本気でもない単なる思いつきに賭けることはしません。

無論、やってみなければどうしても分からないこともあります。その場合どうするか。それは、自分のアイデアをどんな苦労があってもやり切る覚悟を示すしかありません。ちょっと拒否されただけで、提案を取り下げるくらいなら、幹部はそのアイデアを採択しないでしょう。

もし、本当に幹部のアイデアが古臭い、現在に通用しない過去の栄光であり、自分のアイデアの方が絶対に優位性があると思うのであれば、その論拠と覚悟を示せば、幹部も実行を許可してくれるのではないでしょうか。

グラフィックファシリテーター®やまざきゆにこ=イラスト・監修
曽和利光さんとリクルート時代の同期。組織のモヤモヤを描き続けて、ありたい未来を絵筆で支援した数は400超。www.graphic-facilitation.jp

「モヤモヤ り〜だぁ〜ず」とは……
組織と人事の専門家である“そわっち”が、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「20代から好かれる上司・嫌われる上司」の続編である。
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曽和利光=文

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