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2017.04.10

ライフ

こんな部下どうする? レベル11「元上司だった人が部下」

かつての上司が定年後再雇用で、あなたの部署に配属されたとしたら…

2013年に改正高齢者雇用安定法が施行され、「定年の引き上げ」もしくは「継続雇用制度の導入等の高年齢者雇用確保措置」が義務化されました。この背景には、少子高齢化で労働力が減少していくこと、年金制度改革により年金支給が65歳に引き上げられることなどがあります。“60歳で定年を迎え、残りの人生は退職金と年金で悠々自適なセカンドライフ”なんて余生は、もはや過去のものとなりました。つまり元気な60代には、まだまだ現役として働いてもらいましょう、ということです。
「そんな部下でもイケてる上司でいられますか?」を最初から読む
現在の60代といえば、オーシャンズ世代が新入社員だった頃に、30代後半から40代でバリバリ活躍していた人になります。課長や部長といった役職についてマネジメントをしていた人も多いでしょうから、自分が新人のときに直属の上司として社会人の基礎を教わった、なんて方もいらっしゃるでしょう。
そんな大先輩の60代が定年後再雇用の嘱託社員として、あなたの部署に配属される――といった光景が、これからは当たり前になっていくかもしれません。この連載でも、部下のマネジメントと言えば“自分より若い世代の育成”を前提に考えていたわけですが、今後は“自分より老いた世代の活用”についてのマネジメントも重要な課題になっていくのです。
定年後再雇用の場合、多くの企業では、「有期契約」で「再雇用後の役割・業務内容に応じた賃金」となるケースが一般的なようです。これは60代にとって、これまでの仕事の責務や給与が変わることを意味し、もっと言えば“再雇用前よりも安い賃金で責務が限定的な仕事”をお願いすることになるわけです。会社への貢献意識が高い人ほど、再雇用後の処遇については、頭でわかってはいても「これまで頑張ってきた自分に対し、会社はこんな仕打ちをするのか……」と忸怩たる思いを持つ60代も少なくないのでは、と思います。
さて、あなたならこんな部下、どのように対処しますか?
高齢者の雇用が促進されていくと、かつての上司が自分の部下になることも、当たり前の世の中に

60代だからこそのモチベーションを理解することが、マネジメントの第一歩

もしも60代再雇用でかつての上司が配属されたとしても、部下は部下なので、他の職員と同等に接して特別扱いはしない――そう答えた人は、間違いだとは言い切れないけれど、60代の内発的動機(モチベーション)がどこにあるかを学んだほうが、より良いマネジメントができると思います。では、60代のモチベーションとは何か?
ここで紹介したいのが20世紀にアメリカで活躍した心理学者、E.H.エリクソンです。彼は「人間の発達段階には8つのライフサイクルがある」という発達段階論を提唱しました。具体的には、①乳児期 ②幼児期前期 ③幼児期後期 ④児童期 ⑤思春期・青年期 ⑥成人期 ⑦壮年期 ⑧老年期 となります。それぞれの詳細は割愛しますが、37.5歳のオーシャンズ読者は⑦の壮年期、60代は⑧老年期に当てはまります。
⑦壮年期は、次の世代の育成(職場や子育てなど)を通して、「世話する心」が芽生えていく時期。一方で自分自身の限界や停滞を感じる時期でもあるとされます。
⑧老年期は、自らの人生を振り返り、老化や衰退を受け入れながら、「自己を肯定する心」を育む時期。一方でこれまでの人生の後悔や絶望といったものに向き合う時期でもあるとされます。
60代の心の内面には、壮年期の私たちには理解しがたい“苦悩”があります。自分の老化を認める作業は“喪失”と向き合うことですから。「まだまだ若いものには負けない」という言葉の裏には、そういった心の葛藤があるのです。そのうえで、老年期の人は「自分を肯定的に受け止めてくれる環境」で、大きな力を発揮することを知っておいてください。
60代の大先輩が、これまでの経験や知識を生かし、人生の集大成を迎えられるような仕事をいかに作るか。それによりチーム全体に新たな調和と柔軟性が生まれていくようなマネジメントこそが、私たち世代に求められていることではないでしょうか。それは、最終的には私たちが60代になったときに、私たち自身が働きやすい環境を創出する作業でもあるのです。
次回はいよいよ最終回、レベル12「買収した会社の社員が部下」です。
取材・文/藤井大輔(リクルート『R25』元編集長)
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