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いいグラフィックを発掘し続けるビームスT。その手の内明かしと、今夏の注目株
されど、Tシャツ。●これまで何枚着てきたか、Tシャツ。服としては何よりシンプルなつくり、Tシャツ。理想の一枚に出会ったと思ってもすぐに次が欲しくなる、Tシャツ。されどで探す、今年いちばんの、Tシャツ。
しばらく無地トレンドがつづいていたTシャツに、再びグラフィック人気が帰ってきた。誰もが知るモチーフになんだか気になるイラスト、抽象的なアートまでさまざまだけど、いったいどんなのがイケてるの?
ヒントを探してやってきたのはビームスT。ディレクターの水村幸平さんに聞いてきました。「今注目のグラフィックってどんなのですか?」。
フォトT、アートT、デザインT。それぞれのTHE BEST
今や飛ぶ鳥を落とす勢いのイラストレーター、花井祐介さんや長場雄さんをいち早くTシャツに落とし込んできたビームスT。
その他、多くのクリエイターをTシャツというメディアを通じて発信してきた彼らは、どうやって注目株を見つけてくるのか? その手の内を明かしてもらった。
ーずばり、何人体制でクリエイターを発掘しているんですか? 水村 うちは少数精鋭なのでバイヤーは2人だけです。
ーえ!? 水村 でも、店舗のスタッフにも補佐的な部分を担ってもらっているので「知り合いにヤバいアーティストがいます!」みたいな直談判も日常茶飯事。LINEでポンッてきますから。
ー風通しいいんですね。 水村 店舗のスタッフは時代の空気をよく知っていますし、スピード感もある。Tシャツは今のリアルな気分が反映されるものなので、彼らの声は頼りになりますよ。
ーでも、海外のアーティストも多いですよね? 水村 はい。インスタで見つけることもあります。
ーとなると、作品はもちろんフォロワー数も評価に? 水村 そうはなりません。フォロワーが多いから良いアーティストではないですし、Tシャツに作品を載せたときにプロダクトとしてベストなわけでもないですから。
ーたしかに。 水村 着て格好良くないと意味がないですからね、Tシャツは。あと、海外はアートを服に落とし込む文化があまり浸透していないんです。
ーとなると、口説くのも大変そうですね。 水村 まさに。そこが個人的には難しいと思っているところです。
ーちなみに、今の注目は? 水村 佐藤康気さんというNY在住のフォトグラファーです。NY出張のときに出会って、飲みに行って仲良くなりました(笑)。8月にはイベントも実施しますよ。
ーフォトTですね。気になってたところです。 水村 今再び注目ですね。昔みたいに一枚ドーンではなく、デザインの種類が増えているのも特徴かもしれません。佐藤さんのTシャツにはバックプリントも入っています。
・フォトTのオススメクリエイター 佐藤康気●NY在住の気鋭フォトグラファー。ストリートのリアルな風景を切り撮り、NYのみならず日本でも個展を開催。8月末には作品集をリリース予定で、ビームスT 原宿ではイベントを実施する。 |
ーなるほど。アートTの注目株は誰でしょう? 水村 山瀬まゆみさんですね。ヨーロッパ出張の際に行った合同展示会にディスプレイされていた旗のグラフィックがすごく気になったんです。誰だろうと思って調べたら山瀬さんでした。ビームス ボーイのバイヤーとも知り合いで、勝手に運命感じてます(笑)。
ーTシャツにするにあたって、作品はどう決めたんですか? 水村 これは描き下ろしです。何かテーマを伝えた方がいいですか?と聞いたら「どちらでも。自由にやらせてもらえるなら、やっちゃいます」ということだったので、自由に表現してもらいました。
ー贅沢ですね。 水村 ホントですよね。第一線で活躍するアーティストに、Tシャツのためだけに描いてもらうんですから。
・アートTのオススメクリエイター 山瀬まゆみ●東京生まれ、アメリカ育ちのアーティスト。現在は拠点を東京に移し活動する。パルコのシブカル祭りや、コム・デ・ギャルソンのウインドー制作にも携わる。抽象的な作風が特徴。 |
ーそれでは最後に、グラフィック部門の発表を! 水村 (un)というNY在住のアーティストたちが手掛けた作品です。元々は出版物を不定期にリリースしてきましたが、アパレルは今回が初。これは、(un)のロゴを僕らのために特別にアレンジしてTシャツに落とし込んでいます。
ー着るとどんな感じですか? 水村 こんな感じです(笑)。胸ポケみたいに見えるデザインで、シンプルにTシャツを楽しみたい大人向けです。
ーこちらはもうお馴染みとなったフジロック関連のTシャツ。今年は誰がグラフィックを? 水村 これはMA1LL(マイル)さんという女性アーティストにお願いしました。ロックバンド、オカモトズ(OKAMOTO'S)のCDジャケットも手掛けている人ですね。
ーこれも? 水村 これはユーン・ヒョプさんというアーティストです。韓国人なんですが、どこかオリエンタルですっごくいいんです。音楽にインスパイアを受けてクリエイションしているって言ってました。
・デザインTのオススメクリエイター (un)●NYとLAを拠点に多方面に活躍するクリエイティブ集団。国内ではビームスTだけで展開。 MA1LL●ヒップホップユニット、SIMI LAB(シミラボ)のメンバー。チープ感あるキッチュな作風が男女問わず人気。 ユーン・ヒョプ●韓国・ソウル生まれ。アートを追求すべく単身NYへ渡ったアーティストでありスケーター。音楽からインスピレーションを受け、それを作品に落とし込む。 |
ーデザイン部門は3人選出ですか。 水村 レコードが趣味だったBボーイな学生時代がある僕は、この手のが何より気になるのかもしれません。って言っても、正直、どの部門も選びきれないんですけどね(笑)。
こうして出揃った今夏の注目グラフィックTシャツ。どれも若手アーティストによるもので、ネームバリューだけが価値になっていないのが興味深い。グラフィックTシャツ復権の今、どんなのを選ぶかの参考に、ぜひ。
菊地 亮=取材・文