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批判よりも、共感の声に耳を傾けたい


それにしても、一般的には理解を得づらいであろう状況を、顔出しで、こうもあけすけに話せるのは信じがたい部分もある。こうした取材を受けることで、批判や誹謗中傷を受けるリスクもあるだろう。実際、「子供に悪影響だ」と非難されたこともあるという。

朋広さん「子供がかわいそうとか、いじめに遭ったらどうするのとか、よく言われるんですけど、そこはあまり心配していません。いじめの原因なんて他にも山ほどあって、それを考え始めたらきりがないと思っています」。

美香さん「あとは娘たちの恋愛感がおかしくなったらどうするの? という批判も多いですね。でも、恋愛って衝動だから、親がコントロールできるようなものでもないと思うんです。そもそも私は自分たちの価値観が一番素晴らしいとも思ってないですし、娘たちに押し付けようともしていない。最終的には本人が自分で考えて、どう折り合いをつけるか。結果、一夫一妻制の家庭を選ぶなら、それで全然いいと考えています」。

「それに……」と美香さんは続ける。

美香さん「批判の一方で、共感してくださる方も多い。ポリアモリーに限らず、“特殊”であるがゆえに苦しんでいる人から『勇気をもらった』という声をいただくことも増えました。昔は自分を抑えつけて良い人に見られようとしていたけど、今は真逆。批判されそうなことでも堂々と発信してしまおうと。そうすることで、同じく批判を恐れて何かを我慢している誰かの自信につながるなら……、それを狙ってやっているわけではないけど、やっぱりうれしいですよね」。


100%思い通りになる未来はない。だから「どこも目指していない」


この先、美香さんとたくちゃんの間に子供ができる可能性もある。逆に、別れることになるかもしれない。どう転ぼうと、そのときはそのとき。誰しも100%思い通りには動かせない未来について、深く考えることは意味がないと美香さんは言う。「そもそも、私はどこも目指していません。今はただ、みんなでこの状況を楽しんでいる。それでいいと思っています」と、なんとも潔い。

刹那的で、計画性のない人生。しかし、それゆえ将来への不安もプレッシャーもない。「今はすごく気分がいいです」と語る美香さん、それを見て頷く朋広さんのおだやかな表情が印象的だった。



 

榎並紀行(やじろべえ)=取材・文

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