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2018.01.09

かぞく

セックスレスを解消したい……。そんなとき、妻にかけるひと言は?

妻を説得する心理テク Vol.3
連れ添う年月を重ねると、何も語らずとも通じ合うツーカーな関係になる一方、妻の興味は子供へ移り、自分の主張が軽くあしらわれることも多くなる。夫婦関係のこと、お金のこと……、面倒そうなことならなおさらである。なんとか打開策はないものか? 「妻へお願いごとをする」、そんな場面を有利に運ぶための心理学テクニックを学んでみよう。
「妻を説得する心理テク」を最初から読む

夫婦関係が良好のまま、パパの意見を通して妻を説得する方法を探るこの連載。第1回では、臨床心理士の山名裕子先生から、基本的なテクニックを、2回目では休日の接待を快く送り出してもらうためのテクニックをうかがった。今回は年を重ねた夫婦の深い悩みのひとつ「セックスレス」について探っていこう。
 

なぜセックスレスが起こったのかを考えてみる

夫婦関係の中でも、特にデリケートな性の問題。「奥さんとは、もういいや」なんて軽口を多く耳にするけど、内心は「さすがに夫婦だし、少しは……」と思っている人も少なくないはず。急に「しよう!」と男気あふれるアプローチもひとつの手だと思っていたが、まずは行動する前に考えることがあるのだとか。
「この問題は女性のほうが悩んでいる傾向にあります。旦那さんが奥さんのプライドを知らない間に傷つけて、それ以降なくなってしまった……というケースが多いです。お互いに不満がなければ、性生活がなくてもセックスレスと呼びませんし、気にする必要はありませんが、悩みがあるなら解決の糸口を探ったほうがいいでしょう」。
妻から誘われたとき、「今日は疲れてるんだよ」なんてベッドで背を向けた記憶はないだろうか。妻は深く傷ついてしまうものだという。また、このようなパターンも。
「子どもが産まれた後は、セックスレスになりやすいですよね。特に女性は子供を育てることに必死で気持ちが追いつきません。そんなときに旦那さんから誘われても、『なんで私を労わってくれないの?』という気持ちが生まれ、心が離れてしまうこともあります」。
したがって、まずは関係修復の前に「妻の傷」を癒すプロセスから始める必要がある。あのときめきをもう一度! と、結婚当初を思い出すデートプランは、いったん引っ込めておくべきだろう。それよりも「あのときごめんね」と素直に謝り、労わってあげたり、尽してあげたりして、ふたりの心の距離を縮めるところから始めるのが肝心なのだ。
 

長い目でセックスレス解消へと向かうのが肝心

原因に目星がつき、ようやくスタートラインに立った我々。とはいえ、一度ご無沙汰になってしまったベッドまでの道のりはまだまだ長い。誘うためのファーストステップはどうやって踏み出すべきか。山名先生はこう答える。
「心の距離を近づける、という意味でも『フィーリンググッド効果』というテクニックを使いましょう。これは、気持ちは周囲の環境に影響されやすいことを示す心理学用語。人ってわりと単純なもので、ロマンティックなシチュエーションだと、心が動かされやすくなるんです。結婚記念日や奥さんの誕生日に良いレストランを訪れる。ベタですが、それが印象を高めることに確実につながります。また、ドレスコードのあるようなレストランを予約してドレスアップすると、『拡張自我』という心理作用が起こります。良い服を着ることで自身の振る舞いや言葉遣いが変わり、奥さんの返答も柔らかくなるでしょう」。
また、バーに連れて行くことも一手。
「暗い場所では人の『パーソナルスペース(他人に入られると不快感を覚える距離のこと)』が小さくなる傾向にあります。お互いの距離が自然と近づくので、さりげなく話を切り出す。奥さんの心も柔らかくなって邪険にはしないはずですよ」。
じゃあ、そこから誘えば……と思ったらまだ早い。というか、それで乗り気になってくれればいいのだが、独身時代のように多少強引でも、という方法は取るべきではない。まだまだ焦ってはいけないのだ。
「絶対にやってはいけないのが、まさに強引に誘うこと。『最近していないから、いいよ』と奥さんが返事をすればベストですが、誘うのが難しい場合は話し合いでとどめてください。心の距離を近づけずに本能のままいくと、『過去にあなたから拒否したじゃない』『子育ては手伝ってくれないくせに』という具合に、拒否感が強まってしまいます」。
夫の欲求が強い場合、妻は「しなくてはいけない」というプレッシャーを感じてしまうことがある。雰囲気を利用して優しい夫を演出するべく、「最近していないけど、不満ないかな?」と、やんわり切り出してみるといいだろう。話し合いだけで終わる場合、最終的に「今後そうなればいいね」という言い方で妻のプレッシャーを和らげ、長い目でセックスレス解消に持ち込むべきだ。
 

子育てがセックスレスを解消する一手になることも

セックスレス自体にもう少し言及すると、子育ての問題を解決することも大切だという。
「日本では、子供を託児所に預けることに抵抗を覚える人が多いです。『お母さん』として頑張ることも素晴らしいですが、『女性』の時間を持つことも大事です。奥さんの『ひとりの時間』を作ってあげてください。『お母さん』から解放される、つまり『ひとりの女性』へと戻ることで、再び『性』に関心が向くかもしれません。その提案を旦那さんからしてあげてください」。
女性にとって子育てはストレスがつきまとうものだ。そのストレスを軽減するべく、子育てに積極的に関わったり、日頃から妻に感謝の気持ちを伝えたり、妻の心を癒すことに専念しよう。できれば妻をひとりにしてあげて、ゆっくりできる時間を作ってあげよう。セックスレスを解消するには、なにより夫が「妻」を「女性」として接し、いつも気にかけてあげることが大事なのかもしれない。
 

今日から使える「心理テクニック」のおさらい

・セックスレスの原因を見つめ直し、「妻の傷」を癒すところがスタートライン
・良い服を着て良いレストランを訪れ、雰囲気の良いバーで優しい夫を演出しながら、妻に「最近していないけど、不満ない?」と切り出してみる
・子供がいる家庭は「子育て」が妻の負担になっていないか確認
セックスレスの問題は、放置して時間が経てば経つほど解決が難しくなる。それは、妻の不満がちりが積もるように溜まっていくからだ。原因の早期発見・解決が夫婦関係を取り戻す近道になる。
次回は、趣味にお金をつかいたい時の交渉テクニック。無駄遣いばっかりするんだから……なんて小言を言われないためにはどうすればいい? 乞うご期待!
 
【取材協力】
山名裕子
1986年5月7日、静岡県生まれ。臨床心理士。「やまな mental care office」を東京青山に開設。心の専門家としてストレスケアからビジネス、恋愛などあらゆる悩みへのカウンセリングを行っている。まだカウンセリングに対する偏見の多い日本で、その大切さを伝えるためにメディア出演や講演会活動を行う。日本テレビ「ナカイの窓」では心理分析集団「ココロジスト」を務める。新書に『読むと心がラクになる めんどくさい女子の説明書』(サンマーク出版)がある。
いのうえゆきひろ=取材・文
 


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