キラキラの裏に見つけた、知らないことだらけの「スワロフスキー」
ジュエリーをはじめとする美しいクリスタル製品を作り続けているスワロフスキー。どこの国で生まれたのか、価格帯はどの程度か、メンズアイテムはあるのか。話を聞いてみると我々が「知らないことだらけ」というのが現実だった。
スワロフスキーとは?
1895年、ダニエル・スワロフスキーが創業したオーストリアのクリスタルブランド。ジュエリー、ホームデコール、ウォッチなど、高品質なクリスタル製品の製造、販売を行う。20世紀初頭よりオートクチュールデザイナーとのコラボレーションを開始、また多くの映画に作品を提供するなど、ファッションやカルチャーとの関わりも深い。現在では世界約170カ国で製品を展開する、クリスタルのトップブランドに成長している。
「クリスタルの果てしない可能性を追求していきます」
2009年のバーゼルワールドで初の製品を発表し、現在ではブランドの主要コレクションのひとつとなっているのが腕時計だ。ギフトとしても人気が高い。
まるでダイヤモンドのような輝きを放つクリスタルのジュエリー。その輝きは、120年以上にわたって培ってきたカッティング技術によって引き出されている。創業者のダニエル・スワロフスキーから数えて5代目、玄孫に当たるロバート・ブッフバウアー氏に、ブランドの哲学やそのエピソードについて話を聞いた。
「私の高祖父は先見の明のある、開拓精神に溢れた企業家でした。“誰もが手にすることができるダイヤモンド”を作るために、従来よりはるかに精密にクリスタルをカットする機械を発明したのです。独自の方法でカットしたファセット(※1)を持つクリスタルは比類なき輝きを放ち、スワロフスキーの名前が知られるようになりました」。
ブッフバウアー氏をはじめとして、現在も創業者の血を引く一族による家族経営。そして創業時と同じく、オーストリア西部チロル州の歴史ある街、ヴァッテンスに本社を構えている。
「まさに自分たちのゆかりの地であるヴァッテンスで今なおクリスタル製造を行っていることは、私たちの誇りです。ここでは毎日のように新しいカット、カラー、デザインが生み出されています」。
女性用、男性用のネックレスやペンダント、リングといったジュエリーをはじめとして、スマートフォンケースやキーホルダーといったライフスタイルグッズ、そして本誌でも以前紹介したことのある『スター・ウォーズ』などのキャラクターのオブジェまでラインナップ。近年ではウォッチにも力を入れている。膨大な数のアイテムが用意されているが、これは1976年にコンシューマー向け製品を販売して以降のこと。それ以前は、企業やファッションデザイナーからオーダーを受けてクリスタルを作る、プロフェッショナルのためのブランドだった。
「歴史をひもとけば、ファッションやエンタテインメントの分野におけるさまざまなエピソードに溢れています。映画では、’39年公開の『オズの魔法使』(邦題)のなかで、ジュディ・ガーランド(※2)がクリスタルの輝く赤い靴を着用。また’62年には、マリリン・モンローがジョン・F・ケネディの誕生日のために歌ったときに私たちのクリスタルのドレスを着ていたことも、忘れられない瞬間です。ファッションではシャネル、ディオールといったブランドのパートナーとして、オートクチュールのためのクリスタルを提供してきました」。
現在、世界約170カ国でその製品を展開し、日本では実に100を超える店舗を構えているスワロフスキー。まさにクリスタルのトップブランドであるが、そのモノ作りの哲学は創業時から少しも変わらず、連綿と受け継がれている。
「高祖父ダニエル・スワロフスキーのビジョンは、すべての女性のために“輝くダイヤモンド”を作り出すことでした。それは今なお私たちを突き動かしているビジョンです、そして女性だけではなく、身に着けた人、目にした人に驚きと喜びを提供し、輝きを与えたい。これからもクリスタルの果てしない可能性を追求していきます」。
ファセット(※1)ジュエリーやクリスタルにおけるカット面と、それを構成するカットラインのこと。さまざまなファセットを作り出すことで、クリスタルに多彩なデザインと輝きを与えることができる。
ジュディ・ガーランド(※2)1930〜’40年代に活躍したアメリカの女優、歌手。’39年に公開されたミュージカル映画『オズの魔法使』でブレイクを果たす。以降、MGMが手掛ける大作映画で次々に主演を務めた。
加瀬友重=文