旅は日常から離れる非日常のアドベンチャー。そのなかに僕たちの日常そのものであるスマホでのゲームやマンガやアニメを持ち込んでは、ロケーションが変わっただけの日常の延長になってしまう。
せっかくの非日常なのだから、旅先で使う道具もいっそ非日常で統一してみよう。
そして非日常の最たるものといえばアナログなグッズということになる。
宇宙への旅をテーマに作られた万年筆「スターウォーカー ウルトラブラック プレシャスレジン」。旅先で買った絵ハガキに、万年筆でメッセージをしたためて贈るという行為は、デジタル全盛ゆえに価値がある。7万400円/モンブラン 0800-333-0102
例えば、旅先から友人や家族に万年筆でしたためた絵ハガキを出すなんてのはどうだろう? 受け取った人は絵ハガキとインク文字の手触り感にある種の感慨を催すと思う。
手近なSNSで済まさず、わざわざ時間とオカネまで使って自分のことを想ってくれた心遣いに感謝するだろう。
万年筆でメモる旅行記もなかなか味のあるものだ。僕の経験で言うと、パンツのヒップポケットに入るぐらいのハードカバーのノートがオススメ。
内容は、最低限、天気と宿泊先、それにその日食べたものと感想。あと、こいつは発見だと思ったことなら何でもいい。
普段なら絶対書けないような内容も、不思議なもので、旅の途中だと素直に書ける。自分と向き合えるのだ。無論、もう少し高尚に、旅先の歴史や文化に関する考察もよろしいが……。
ジオメトリックにアレンジされたレトロな「Gモチーフ」のケース、さらに細部までこだわり抜かれたカードやダイスのデザインが特別感を演出する。トランプ&ケース3万4100円、ダイス&ケース4万9500円/ともにグッチ(グッチ ジャパン 0120-99-2177)
トランプもアナログ度はかなり高い。小さな子供連れの旅ならシンプルなババヌキ、少し年長の子供なら七並べやセブンブリッジが王道。
大人ふたりなら、ハリウッド映画のクラシック『アパートの鍵貸します』のエンディングにも登場するジン・ラミーにとどめをさす。旅立つ前にその遊び方ぐらいは予習しておこう。
創業1800年のかるたの老舗、大石天狗堂が昔ながらの製造方法で一枚一枚裏貼り仕上げを施した伝統の花札。古くから日本人の生活に知的刺激を与えてきた遊びを、旅先でゆっくり楽しむのも粋。2200円/大石天狗堂(ビームス ジャパン 03-5368-7300)
だが、僕のおすすめの最たるものは、日本の伝統的カードゲーム、花札だ。夕食後、寝るにはまだ早いという時間に、布団やベッドの上でやる「こいこい」を僕は愛するものであります。
盛り上がって、盛り上がって、翌日もまた再戦……なんてこともありうるゲームであります。
花鳥風月という言葉があるが、まさに日本の四季のシンボルである植物・動物・季節の行事が描かれている。日本の風土に根差した文化のミニ絵本と呼んでもヨロシイ。
自分自身の教養にもなるし、子供たちにとっては遊びながら自らの文化的ルーツを学ぶ機会にもなる。
家族や仲間と触れ合い、自分と向き合い、文化にも親しめる──アナロググッズを携えれば、僕たちは旅のなかに「もうひとつの旅」を見いだすことができる。